女囮捜査官4 嗅覚

 曇天。涼しい。エアコン要らず。

 山田正紀『女囮捜査官4 嗅覚』幻冬舎文庫1999年初版を読んだ。正統的な本格推理小説だ。表紙裏の紹介文から。

《 連続放火事件の現場で女性の全裸死体が発見された。全身のムダ毛を剃られ、日焼け止めクリームをくまなく塗られた遺体の傍には被害者を模したユカちゃん人形が……。犯人の狙いは? そして二つの事件の接点は? 》

 この巻では嗅覚が鍵になっている。連続放火事件と連続殺人事件の交差、接点がよく考え抜かれている。そこが殺人現場である理由もトリッキー。事件は八月三日の夜に起きたが、何よりも今との接点はこのくだり。

《 この夏の電力消費量はついに史上最高に達したらしい。
  東京電力では広報を通じ、しきりに節電をうったえかけている…… 》86頁

 東京タワーの展望台が解決の糸口になるのだけれど、今なら東京スカイツリーの天望デッキか。

 ネットのうなずき。

《 あたしたちは自分で思っているよりも、目に映る世界のことをほんの少ししか見ていない。ときどき、カメラのファインダーを覗くと、そんなことを感じる。 》

 椹木 野衣(さわらぎ のい)氏のツイッターから一部を引用。昨晩の原発再稼動反対デモ。

《 身動きの取れない官邸前から移動。田中康夫がびしょ濡れで白い風船を配ってた。 》

《 国会議事堂に向かう歩道もこれ以上進めない。みな白い風船を持っている。 》

《 もう、これは官邸前抗議行動とは呼べない様相のものになっている。車道に溢れるというわかりやすい達成感の代わりに、活動の全体がつかめないほど広く人々の範囲が広がり、その所々に拠点のようなものができては消えている。 》

《 抗議行動が広域化することで、音の響きと交錯も複雑化している。背後で太鼓の乱打、拡声器での演説、ホイッスル、手拍子、鐘の音、そして再稼働の声が、四方八方から不揃いで聞こえてくる。さらに公園の樹からはフェイザーが掛かったような蝉の合唱がドローンのよう。これらのすべてが音楽でもある。  》

《 ふと背にしていた看板を振り返ると憲政記念館のものだった…。 》

《 それにしても凄い盛り上がりだ。国会議事堂前の広い道の左右を再稼働反対の声が埋めている。 》

《 官庁街が縁日みたいに。 》

《 20時になると、みな一斉に帰り始めた。写真は国土交通省前の横断歩道。歩きながらも声はやまず。 》

《 今日の首相官邸前の抗議行動。官邸からは離れるけど、空間に余裕がある国会議事堂前、左右歩道の盛り上がりが凄かった。特に右手前に陣取った太鼓部隊と、議事堂直近の角付近。官邸の近くで叫んでも「音」としか認識しないドジョウ親父なわけだし、近づくことに拘らず、好きな場所でやればいいと思う。  》

《 今日の官邸前の抗議行動。型通りの「集会」や「デモ」ではない可能性を感じた。車道に出れないなら無理に出る必要もない。どこまでも長く、歩道に沿って延びていくのも手だ。劇場型の空間は崩れるけど、人の声と音は彼方まで広がり、随所でいろんなことが起きて、全体は誰にも見尽くせないものとなる。 》