星の牧場

 今月に入って初めてのまとまった雨。バスで来る。女性運転手。運転が丁寧な気がする。

 庄野英二星の牧場(まきば)』角川文庫1986年4刷を読んだ。傑作。太平洋戦争から帰還した傷痍軍人のイシザワ・モミイチが、元の職場の牧場で再び働く。彼は、戦時中の記憶の殆どを失っていた。よく覚えているのは、彼が世話をしたツキスミという軍馬。牧場ではツキスミの蹄の音がときおり聞こえてくる。彼はツキスミに再会したくて山の奥へ入ってゆく。そこで彼はジプシーたち(山の民)に出会う。彼らはみな、なにがしかの楽器を演奏できる。

《 ジプシーたちは、人間はたのしくくらすのが目的だから、あくせくはたらきすぎてくるしみがふえるようなことを、こころの底からけいべつしていた。 》 94章

《 「──おれが、そもそもジプシーになったのも、人間のさびしさをまぎらわそうとするためであった。ひととはなれて山のなかをさまよっていることは、そりゃさびしいさ。しかし、人間てものは、人間と人間といっしょにくらしていてもさびしいもんだから、しょうがねえなあ。はやくあきらめてしまって、雲や小鳥や星たちとなかよしになっているほうが、いくらかましかもしれねえ。おれがオーボエなんてけいこしはじめたのも、いや、おれだけじゃねえ。ジプシーたちがみんなそろって笛をふいたりラッパをふいたりするのは、みんなちからいっぱいためいきをついているみたいなものなのだ── 》115章

《 マネやモネやコローやシスレーでも、夕映雲のうつくしさを、自然以上にうつくしくえがくことはできなかった。セガンティーニの高原の空が、いかにあかるくすみきっていようと、自然の高原のうつくしさにかなうものではない。 》123章

 鋭い批評をさりげなくすべりこませている。それにしても、この本、印刷されていないページがいくつもある。74、75、83、83章は、そっくり抜けている。珍しいので売らずにとっておく。

 ネットのうなずき。

《 新聞で信頼できるものが三つある。死亡記事に株の値段、それにテレビの案内欄だ。この三つにウソはない。 》

《 各社の世論調査。前にも書いたが、固定電話(いえでん)だけが対象。だが官邸前デモに見られるように、若者を動かしているのは圧倒的に携帯電話。若者はほとんど固定電話など持っていない。そんな若者を調査対象から外し、固定のみで調査する「世論」は本当に正しい世論を表しているといえるのか? 》

 ネットの拾いもの。

《 冷凍食品を大量に買い込み、自転車のカゴに入れたままになっていることを、今電車の中で気付いたぐああああ 》