ふたたび赤い悪夢

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 法月綸太郎『ふたたび赤い悪夢』講談社文庫1996年2刷を読んだ。『頼子のために』『一の悲劇』と続く三部作の第三部。

 名探偵法月綸太郎は、『頼子のために』で受けた心の深い傷にもがき苦しんでいた。

《 半年前に関与した事件の後遺症が、ずっと尾を引いていた。綸太郎はもうかなり以前から、そのことに気づいていた。忘れもしない、西村頼子の事件である。 》17頁

《 そもそも、あの事件に首を突っ込んだのがまちがいだったのかもしれない。 》18頁

《 彼はこの時初めて、他人の事件に関与することの恐ろしさを知った。それは、逃れることのできない透明な檻のように、綸太郎を閉じ込めた。彼はその中で自分を見失い、窒息しかかっていた。 》18-19頁

 そんな彼に、旧知の若い女性から窮地の知らせ。裏表紙の紹介文から。

《 法月綸太郎のもとに深夜かかってきた電話。救いを求めてきたのはあのアイドル歌手畠中有里奈だった。ラジオ局の一室で刺されたはずの自分は無傷で、刺した男が死体で発見される。恐怖と混乱に溢れた悪夢の一夜に耐え切れず、法月親子に助けを願い出た。 》

 法月綸太郎は苦しみながらも事件の真相を突き止め、解決へ導く。そして彼は思う。

《 これから振りかかってくるであろう、ひとつひとつの事件、ひとりひとりの人間との関わりによって、たえず自分というものが試されること、そして、いついかなる時でも、常に自分が立っている地点を根こそぎ疑ってかかること、それだけは忘れることなく、心の中の石板に深く、強く刻みつけておかなければならない。 》604頁

 ふう。ミステリーではなく純文学を読んでいる気がした。

《 この本は二十七歳の時、一九九二年の二月に書き終えた。 》「文庫版あとがき」

 ネットの見聞。

《 地球表面のわずか0.3パーセントの地域に、世界の地震の10パーセントが集中している。こんな場所に多くの原発を作るのは、地雷原でカーニバルをやるようなもの(石橋克彦氏) 》

《 異なる音楽のジャンルは別の公理に基づいているだけで、ある公理系(歌謡曲)が別の公理系(フリージャズ)より優れているのを証明したいなら、両者を含む超公理系が必要となる。が、同時にその超公理系が正しいことも証明しなければならず、けっきょく自家撞着に陥る。アートも同じ。具象<抽象とか。 》 椹木 野衣

 ネットの拾いもの。

《 「キリン秋味」ってあるけど、「秋味」よりもっと短い期間限定ビールって、どんなだろ?

  たとえば、「キリン彼岸味」、「キリンお盆味」

  ーん、酔うと一気に老け込みそうな枯れた味って感じだ。

  「キリン梅雨味」

  幾ら冷やしても生ぬるくて、発泡も微弱で、切れ味がなくて、却って喉が渇きそう。 》