懐かしき未来

 お昼から白砂勝敏展の準備。ガラス瓶と金属と鉱石を組み合わせた新作が、スチームパンクの懐かしき未来を表象しているようで、じつに興味深い。これは面白い。

 橋本治内田樹橋本治内田樹ちくま文庫2011年初版を読んだ。橋本治内田樹が問い掛けるというかたちの2005年の対談録。内田樹(たつる)は「まえがき」で記している。

《 橋本治さんは僕が「偉大な」という形容詞を惜しまずに冠することのできる、ほんとうに例外的な書き手である。 》

《 日常的だけれども根源的、瑣末なことにこだわっているようでいてことの本質に及ぶ。それが「橋本的」ということである。 》

 見事な分析だ。橋本治は「裸の王様だ!」と直截言ってのける人だ。以下、橋本治の発言から。

《 つまり、小説書いていて出来てるか出来てないかなっていうことのひとつはね、「これ読んだ人に、絵が見えるかな? どうかな?」っていう、その情景描写なんですよ。でも日本の評論家ってそういうことまったく問題にしないじゃないですか。 》51頁

《 僕はね、なんだか議論とか論争がわかんないんですよ。ぜんぜん違う考えの人を説得しようとするのって無駄じゃない? って思っちゃうんですよ。 》164頁

《 戦後になって古代史が解禁になったじゃないですか。そのときに、マルクス主義史観が入ってきちゃったから、日本の歴史が全部土地制度の話になって、人間が全く見えないの。 》251頁

《 俺はパブリックな人だから自分の仕事の範囲は責任をもってやるけど、それ以外は他人の仕事で他人がやるもんだと思っている。他人を信用してそこをやらないでいるというのがパブリックでしょう、と。 》255頁

《 要するに、朝廷はエスタブリッシュメント組織の極致じゃないですか。身分証明書の発行機関なわけで。 》266頁

《 インターネットはメディアと融合しない方がいいと思うし。 》282頁

《 久生十蘭という人は、文体にリズムがあるから真似がしやすいけれども、真似をすれば中身はなくなる。 》327頁

《 ちゃんとした紹介が最大の批評だと思ってるんです。 》334頁

《 だって日本の文芸評論家は文章の美しさは問題にしてくれないんですもん。 》339頁

《 怖いのは、中国って不景気を経験したことがないじゃないですか。 》360頁

《 本文でも明らかなように、私は現代思想とか哲学とか、そういうものが苦手なのである。なにしろ「抽象概念」が呑み込めない。 》「あとがき」371頁

 米澤穂信ツイッターから。

《 十蘭に、モナコですかんぴんになった日本人の女の子ふたりがどたばたしながら大金せしめてパリに帰る話があったなあ……。だいぶ笑った記憶が。 》

 姫野カオルコのブログから。

《 ある女性が、あるとき、私がおいておいた『ナインティーズ(橋本治・著)』を読んでいた。
  その場所にもどった私にその女性は言いました。
  「わかりやすい、軽い口調で書いてるから、気さくで読みやすい本やね」と。

  橋本治が読みやすい? 軽い? 気さく?しかも、橋本本のうち一、二を争う名著『ナインティーズ』が?と、びっくりしましたが、この女性にとっては、本というのは、いかめしく深刻な文体で書いてあってこそ、という観念があって、そうではない文体は、イコール軽い、読みやすい、と見えたのでしょうね。一見ね。 》

 ネットのうなずき。

《 今の日本の政治システムが劣化しているのは、システムのせいではない。

  人間の質が劣化しているのである。 》 内田樹

《 ここ数日だけでなく、数ヶ月のスパンで観ている人にはわかるだろうけど、イスラエル軍は結構な頻度でガザに攻撃を加えているのだよね。でも、日本のマスコミって「ハマスが先に攻撃>イスラエルが反撃」という構図に無理やり当てはめようとする。私が学生の頃からずっと同じ。ルールでもあるの? 》  志葉玲

 ネットの拾いもの。

《 ♪ あなたがつけた足跡にゃ 銭形警部が追って来る〜 ♪ 人生は モンキー・パンチ ♪  》