1月12日(土) 俳句集

 友人たちと日がな一日、熱海を歩いて廻った。昼前に見番で芸妓の華やかな踊りを観賞、蕎麦を賞味し、コーヒーで一服、路地裏を探索、お土産屋で友人たちはお買いもの、急な坂道に設けられた石段を歩いたり。昭和レトロが満ちている、見知らぬ他国の街へ迷い込んだような面白さ。熱海は昭和が熱いぜ。また来るぜい。

 自宅へ持ち帰った本に『ダカーポ』565号マガジンハウス2005年がある。処分するつもりだったけど、特集が「最高の文庫本──ベストイレブン──」。文庫本でサッカーチームを作ったら、こんなメンバーにという企画。とりあえず保管。 

 小説家石田衣良がお気に入りの三冊を挙げている。神崎京介女薫の旅』、川端康成『掌の小説』そして『日本の詩歌 30俳句集』。『俳句集』は元本で持っている。その推薦の言葉。

《 「これはぜひビジネスマンに薦めておきたい1冊。企画書を作成するときのタイトル、見出しの付け方は、なかなか上達しないもの。その上達の秘訣は、意外に現代俳句にあるんです。」 》

《 「ましてや作家志望なら絶対、知っておくべき言葉の発見があると思う。」 》

 へえ〜。考えもしませんでした。

 夏目漱石から種田山頭火を経て石田波郷までを収録。漱石だったらこれが好き。

    名月や故郷(ふるさと)遠き影法師

 読んだことのない俳人に渡辺水巴(すいは 明治15-昭和21)がいる。

《 水巴の父渡辺省亭は花鳥画の大家、 》

 省亭の息子とは驚いた。

《 水巴は「亡父の好みはすべて瀟洒であった。また性格は純粋生一本であった。私の趣味も気質もそれを承け継いでいる」と記す。 》

    天の蒼さを見つつ飯盛る目刺かな

    てのひらに落下とまらぬ月夜かな

    冬の夜やおとろへうごく天の川

    父に似て白き団扇の身に添へる

    寒風や隊伍みじかき帰還兵

    天の川冷え極まりてけぶりたつ

 紹介終り。切りがない。