きょうパソコンを自宅へ移すはずが、業者の手違いで10日も延びてしまった。げんなり。
昨日鏑木清方を話題にしたので、その流れで。近代挿絵は鏑木(かぶらき)清方に始まり、そして清方に終った、と思う。雑誌『芸術生活』1974年8月号、特集「さしえの黄金時代」から。
《 近代の挿絵を芸術に高めた草分けの人は、いうまでもなく鏑木清方である。一葉女史の『にごりえ』による挿絵は、かけ値なしの絶品である。幕末から明治初年の浮世絵にこびりついていた泥臭を、清涼な水でサアッと洗いあげたような画品のさわやかさは、まさに新しい芸術の名にあたいしよう。 》 落合清彦「近代挿絵評判記」
明治末の清方の雑誌の口絵は、年を追うごとに師水野年方らの旧態を脱し洗練されていく。1971年、生前最後の個展に寄せた文章から。
《 私は少年の日から読み物に興味が深く、挿絵画家を志したのもこれが文章により近いからのことであったが、この途は私の日常庶民の暮しに寄せる関心を満たしてくれるものでもあった。 》
落合清彦「近代挿絵評判記」では岩田専太郎について大きくさかれている。
《 専太郎が没して、これからの挿絵界は大きく変化してゆくだろうが、彼の果した役割は決して小さくない。印刷の製版技術と小説のツボをマスターし切った専太郎の画業は、影響の大きさで江戸後期の五渡亭国貞に匹敵しよう。 》
《 ──ともあれ、岩田専太郎は、くりかえすが、江戸の浮世絵から近代挿絵への伝承を、大衆のためにみごとになしとげた人だった。 》
鏑木清方の亡くなった1972年を近代挿絵の終着、という私の見方、岩田専太郎の没した1974年に変更するかなあ。私の見方は、1973年にやなせたかし編集の雑誌『詩とメルヘン』サンリオが創刊されて、新たな挿絵=イラストの時代が始まった、というもの。小説の挿絵から詩のイラストへ、転換期、端境期の二〜三年はあるだろう。
それからの展開がどのように進んだかは、私の調査はまだ届いていない。大森望・三村美衣『ライトノベル☆めった斬り!』太田出版2004年初版を読んだが、百花繚乱、お手上げ、万歳。
この稿を書くため、昼前にブックオフ長泉店で『現代日本の美術5 鏑木清方/山口逢春』集英社1976年初版を購入。ほかに飯城勇三ほか『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』ぶんか社文庫2005年初版、計210円。
ネットの拾いもの。
《 この世界は神が遺したダイイング・メッセージなのかもしれない。 》