調和の幻想

 日差しが強い。桜三月春の陽気。自転車でブックオフ沼津リコー通り店へ。立川談春『赤めだか』扶桑社2008年初版帯付、山口雅也『奇偶』講談社2002年2刷、西澤保彦『腕貫(うでぬき)探偵』実業之日本社文庫2012年2刷、林美一『江戸艶本(えほん)を読む』1994年初版、『このミステリーがすごい! 2011年版』宝島社2010年初版、計525円。『奇偶』は新書で持っているけど、できれば大きい活字で読みたい。新書は二段組みで小さい字、単行本は一段組みで字が大きい。

 幹線道路は渋滞。これを河津渋滞と呼ぶ。東伊豆の河津桜を見るためにここ、沼津三島から渋滞。

 昨日の「天才までの距離」で最近電脳天災に見舞われた、森美術館の「会田誠展 天才でごめんなさい」を連想。本歌取りのような彼の絵に魅力を感じない。ブックオフで105円で購入した『孤独な惑星―会田誠作品集』1999年(サイン入り)も、一度開いただけ。

 その昔新刊で買ったまま本棚に鎮座していた、吉田秀和『調和の幻想』中央公論社1981年初版。丸谷才一・加島茂・三浦雅士『文学全集を立ちあげる』文春文庫2010年初版で言及されている。

《 三浦 それから「紫禁城となんとか」という……。

  丸谷 「紫禁城と天壇」、「調和の幻想」という中国紀行にはいっている。あれはとてもいいものですね。 》

 読んで驚いた。知的刺戟にあふれている。読み進めるにつれ、新しい視界が次々に開かれてゆく。対象への明晰な分析に基づく明解な文章が軽快に綴られてゆく。わくわく、わくわく。論説の眼の覚めるような面白さを堪能。座右に置いて何かと再読したくなる。

 前世紀に読んでもこれほどの感銘は覚えなかっただろう。本文に掲載されている粗い白黒写真の絵からは、絵の細部まで参照できない。紫禁城であれ、マネ、ドガの絵であれ、ネットで検索し、鮮明な画像と対照しながら論をじっくり読むことができたからこその充実感。いい時代になった。明日へ続く。

 ネットの拾いもの。

《 ♪ 花粉が飛んだ〜 花粉が飛んだ〜 (渡辺真知子の声で) 》