この世の王国

 アレホ・カルペンティエル『この世の王国』創土社1974年初版を久しぶりに再読。叙事詩のように、ぎりぎりまでそぎ落とされた文章。

《 小説は、一人の人間の生涯をとおして、一八世紀の七十年代からつぎの世紀の二十年代にいたる、ハイティの約五十年の歴史を概観したものである。 》 エミール・ボレーク

 口絵写真のシタデル・ラフェリエール城砦は、白黒写真でなんだかよく分からなかったけれど、今はネット画像で納得。ハイチの世界遺産

 『この世の王国』1949年から『バロック協奏曲』1974年への展開と飛躍。じつに興味深い。『この世の王国』はまた、古川日出男の『ベルカ、吠えないのか?』2005年を連想させる。こちらは二十世紀の軍用犬の年代記古川日出男は文春文庫で書いている。

《 想像力の圧縮された爆弾。創作意図を問われれば、ひと言、それに尽きる。 》

《 そこから歴史に挑む必要が生じた。 》

  アレホ・カルペンティエル古川日出男比較文学論を論じる人がいるかも知れない。私は寡聞にして知らないが。

 ネットの見聞。

《 病院で個々の患者の病名や容態を口にする者はいない。そして患者を偶うに殊遇に徹している。看護師の思慮の深さや広さに屡々驚愕させられる。どのような人間であろうが、生活者である以上雑念を持っているに違いない。ところが、なにかの瞬間に集中力が働くと一切が吹っ切れてしまう。看護に携る人間は、苗字を持つ個人であると同時に、別の抽象されたなにものかに成り果せる。 》 渡辺一考

 ネットの拾いもの。

《 読書道免状規定

  読書十段…蔵書で私立図書館が建つ
  読書九段…蔵書が大学や図書館にまるごと寄贈されて、「◯◯文庫」と呼ばれる
  読書八段…蔵書を収納するために家/部屋を住居と別に借りる
  読書七段…住居面積の五割以上を本を置くスペースに使っている 》

 ホームセンターで買ってきた輸入板を棚と柱にして壁に作った本棚は、文庫棚が十三段、単行本棚は十段。本棚は手作りに限る。安いしピッタリと収まるし。夢「 四面書架 」。