戦後名詩選1・続き

 27人の戦後詩人の三〜五編の詩が選出されている。なじみ親しんでいる詩の一節。

《  深い器のなかで
   この夜の仮象の裡で
   ときに
   大きくかたむく  》 吉岡実静物

《  ああ
   きみに肉体があるとはふしぎだ  》 清岡卓行「石膏」

《  その秋 母親は美しく発狂した  》 田村隆一「腐刻画」

《  血は空に
   他人のようにめぐっている  》  飯島耕一「他人の空」

《  ついに水晶狂いだ
   死と愛とをともにつらぬいて
   どんな透明な狂気が
   来りつつある水晶を生きようとしているのか  》 渋沢孝輔「水晶狂い」

 これらの詩句を思い浮かべては、詩全体を思い、その詩空間を浮遊、堪能した。そして選ばれた詩人の選ばれなかった愛唱詩。

《  みえない関係が
   みえはじめたとき
   彼らは深く訣別している  》 吉本隆明「少年期」

《  僕の左側に
   いつも空いたままで
   ひとつの席がある  》 黒田三郎「そこにひとつの席が」

 しびれる名詩群。そんな愛着きわまりない詩に出合わなくなった平成。『戦後名詩選1』の巻末、野村喜和夫は「解説」で書いている。

《 二十世紀後半の四半世紀(そして来世紀?)を特徴づけることのひとつは、言語から情報へという文化基盤での大きなシフトであろう。情報とは言語の砂漠化である。浅い表層でさらさらと砂のように伝達しあうにはそれでもよいかもしれない。しかし、渇きを覚える人もいるだろう。 》

 ここにいる。

 ネットの見聞。

 TPP、日本政府の発表内容は、アメリカの英文文書とまるで違っている。

《 日本政府の発表内容、米国USTRのリリース(英文原文)、そして各種報道を読み比較をしてみたところ、驚くべき事実がわかった。日本政府の合意公開資料は、USTRがリリースしたプレスを都合よくつまみ食いしたものなのだ。しかも、ねつ造ともいえる内容が含まれている。 》 Acts for Democracy

《 上記2つの政府が出した文書を読み比べて、まず気づくのはその「トーン」の違いである。USTR側が出した文書は、明らかに米国から日本への「要求」という基調で書かれており、日本がそれにどこまで応じたか、ということに文書の主旨は尽きる。 》 同上