大阪圭吉作品集成

 先週届いた『大阪圭吉作品集成』盛林堂ミステリアス文庫を読んだ。これは面白い。創元推理文庫でいくつか読んでいるけど、肌が合わなかった。たまたま読んだ短篇が合わなかったようだ。しかし、こちらに収録の四篇、どれも面白い〜。「水族館異変」の原色の妖しさ、茂田井武の挿絵もいい。

《 その日、パノラマ室の見物人は、世にも不思議な光景を見た。それは、凄艶な地獄のまぼろしだつた。 》

 つづく「香水紳士」「求婚廣告」「告知板の女」三篇も機智に富んだ鮮やかな結末だ。解説で森秀俊は大阪圭吉の魅力を三つに集約している。

 1 ケレン味たっぷりの探偵小説的な見せ場

 2 視覚に訴える謎

 3 色彩感あふれる描写

 納得。大阪圭吉『とむらい機関車』国書刊行会1992年初版を読む。十四篇収録。大きな活字組が心地良い。じっくり味読。短篇小説の醍醐味、読書の愉楽を大いに味わう。大胆に作り込まれた工芸品のような作品群。戦前の江戸川乱歩の推薦の言葉。

《 従来日本のどの作家が、かくまでも純粋に、かくまでも根強く、正統短篇小説への愛情と理解とを示し得たであろうか。どの作家が、これ程深く理智探偵小説の骨法を体得し得たであろうか。 》

 昨日の毎日新聞朝刊コラム「経済観測」、田中直毅「CO2排出量取引の崩壊」。

《 地球温暖化にストップをかけるための『炭素価格』の設定を、というのが経済学からの提言である。 》

 そんな制度がマスメディアを賑わしたなあ……。新しい経済モデルとか……。

《 しかし今後は排出量取引制度の維持すら難しい。 》

《 そもそも排出権なる権利が存在するという前提がおかしい。こんな権利付与はないだろうという健全な常識論が、現実の厳しい経済情勢のなかで、ないがしろにされたことに発する制度だったといわざるをえない。 》

 震災復興、TPP、原発憲法、格差、領土。健全な常識論がないがしろにされている2013年の政界財界官界マスメディア。

 グラフィック・デザイナー永井一正が制作した東京電力のロゴの解説。

《 構成要素が円だけでここまでのインパクトと造形美を感じさせるロゴマークはなかなかありません。 》

 近藤東の詩「国旗」を連想。

《  セガレよ きょうはメデタイ日
   なぜ 白旗を あげるのじゃ
   いいえ トウサン 日の丸の
   赤を 追放したまでじゃ     》