パノラマ島綺譚

 江戸川乱歩『パノラマ島綺譚』光文社文庫2004年初版を読んだ。絢爛たる夢魔の世界、パノラマ島。

《 美しき身の毛もよだち、恐ろしき歯の根も合わぬ、五彩のオーロラの夢をこそ 》

 と乱歩はよく色紙に認めたというが、そんな夢を描いた小説だ。パノラマ島入口のブイから島まで続く海底のガラスのトンネルから見る海藻や魚類の奇怪な描写、島内の極彩色の風景描写がなんともいえず蠱惑的でクラクラと眩暈を誘う。

《 若しも、恐怖に色づけされた時、美が一層深味を増すものならば、世に海底の景色程美しいものはないでしょう。 》

《 見物は先ず細い真っ暗な通路を通らねばならない。そしてそれを出離れてパッと眼界が開けると、そこに一つの世界があるのだ。 》

 昨日の蘭郁二郎『少年科學小説 奇巌城』の冒頭につながる。

《 いかに樹海の中とはいへ、外にゐる時は滿天の星明りで、あたりの様子もうつすらとではあるが見ることも出來たけれど、このぴつたりと閉ざされた穴の中では、まつたく一糎先も見えぬ漆のやうな闇に包まれてしまつたのだつた。 》

《 なるほど闇を透かして見ると、行く手にぼーつと白い光りがたゞよつてゐる。 》

  『少年科學小説 奇巌城』のカラー口絵は、トンネルから出るトラックが森の中をこちらへ向って来る絵。「千と千尋の神隠し」の異界への道のよう。

 『パノラマ島綺譚』で最も印象深かったのは、曲線をめぐる記述。

《 人はこの世界に於て、始めて、曲線の現し得る美を悟ったでありましょう。自然の山岳と、草木と、平野と、人体の曲線に慣れた人間の目は、ここにそれらとはまるで違った曲線の交錯を見るのです。どの様な美女の腰部の曲線も、或はどの様な彫刻家の創作も、この世界の曲線美には比べることが出来ません。 》

 大正十五(昭和元、1926)年、乱歩三十二歳の執筆。

 ネットの見聞。

《 多くの人が何度も語ってるけど、私も。今回の児童ポルノ法、一番洒落になってないのは、漫画がどうとか、そういう以前の問題で、「警察さえその気になれば、事実上、日本全国、例外なく、全国民を、誰であろうと、恣意的に逮捕できる法律」が作られるって事なんだよ。それだけは理解して欲しいの。 》 榊一郎

 ネットの拾いもの。

《 新作映画「大抵はバーにいる 2」 》