時代は変わる

 昨日の毎日新聞、読書欄。講談社文芸文庫編『追悼の文学史講談社文芸文庫への池内紀の評から。

《 すべて『群像』から選ばれていて、一九六四年から七二年にかけての六号分が底本になった。 》

《 追悼記の進行に立ち会うなかで、四十年あまりをひとっとび。だが気がつくと昭和の文壇はもはや影もなく、あれほど世に知られた人も、多くがすっかり忘れられた。 》

 斎藤愼爾『周五郎伝』白水社への川本三郎の評から。

《 純文学と大衆文学が画然とわかれていた時代があった。その時代は、文壇では川端康成志賀直哉谷崎潤一郎ら純文学の作家がはなやかな「正月作家」とすれば、大衆文学の山本周五郎は地味な「歳末作家」と低く見られていた。 》

《 いまはもうそんな区分はない。いい文学かそうでないか。それだけだ。 》

 別紙面、西水美惠子「時代の風」の題は「少子高齢化社会」。見出しは「『小国』悲観論を笑う」。

《 数年前、某政治家に「人口でも経済でも、大きくなければ世界が相手にしない」と言われ、思わず苦笑したことがある。複雑な国際関係の力学のこと、むろん国の大小も関わる。が、私の経験は、リーダーの人徳と先見の明にこそ図体の大小を凌ぐ偉力が在るという現実を、常に見せてくれた。 》

 別紙面。「虚構の環(サイクル) 第3部 安全保障の陰で 5」から。

《 2004年4月に経産省職員が作成した文書がある。(略)「政策的意義を喪失した政策(サイクル)を見直し、無用の国民的負担を避けるべきだ」と結論づけている。 》

 サイクルとは核燃料サイクルプルサーマル計画のこと。

《 作成に関与した関係者が語る。「さまざまな方便を使ってもサイクルの破綻ぶりは動かない。早く撤退しないと負担が増える一方だ」 》

 時代は自ずから変わってゆく。深い洞察と構想力で変わってゆくべき方向を見定め、つねに検証と修正を怠らないこと。そうしないと後世に禍根を残すことになる。源兵衛川を歩いて痛感。生態系は日々変わっている。どうすれば今の生態系を維持し、さらに豊かな方向へ導けるか。自然との付き合い方。

 ネットの見聞。

《 モーリス・ルヴェル『夜鳥』(創元推理文庫)がいつのまにか版元「在庫なし」になっていた。『厭な物語』(文春文庫。ルヴェル「フェリシテ」を収録)効果かな。 》 藤原編集室

 本棚を確認。デュ・モーリア『鳥』創元推理文庫2000年初版から離れたところにあった。『夜鳥』2003年初版は新刊で買った。いつまでもあると思うな、新本、新古書、ソッキ本。