君たちはどう生きるか

 雨。本屋へ行きたいが……家こもり。

《 驚きました。本屋に入ったら、雨宿り客で大繁盛。 》

 昨日短歌を紹介した阿部美智子さんから俳句同人誌を恵まれる。最近は俳句を作っている。

《   ぼろぼろの身のあかるさよ牡丹雪

    底のなき袋を負へり残る鴨        》

 吉野源三郎君たちはどう生きるか岩波文庫2011年65刷を読了。名著。1937年発行。子ども向けの本だが、六十歳を過ぎた私が読んでも心を深く動かされる。私が子どもっぽい(それはそうだけど)から感銘を受けたのではなく、内容が社会との関わり、自身の生き方を深く考えさせるものになっている、その考えさせ方がじつに見事で感銘を覚えた。そして自身の来し方を省みる。登場人物と同じ中学生の頃読んでも、どれほど深く胸に届いたか。今なら痛切にわかる、吉野源三郎という哲人の思慮深い思索が。中学生の主人公コペル君の叔父さんの言葉。

《 世間には、他人の眼に立派に見えるように、見えるようにと振舞っている人が、ずいぶんある。そういう人は、自分がひとの眼にどう映るかということを一番気にするようになって、本当の自分、ありのままの自分がどんなものかということを、つい、お留守にしてしまうものだ。僕は、君にそんな人になってもらいたくないと思う。 》 56頁

《 仲のいい友だちに何かしてあげられれば、それだけで、もう十分うれしいじゃないか。人間が人間同志、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにありはしない。 》 97-98頁

《 労力一つをたよりに生きている人たちにとっては、働けなくなるということは、餓死に迫られることではないか。それだのに、残念な話だが今の世の中では、からだをこわしたら一番こまる人たちが、一番からだをこわしやすい境遇に生きているんだ。 》 133頁

《 君もよく知っているとおり、人間は最初から人間同志手をつないでこの世の中を作り、その協働の力によって、野獣同然の状態から抜け出してきた。 》 185頁

《 英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、本当に尊敬が出来るのは、人類の進歩に役立った人だけだ。そして、彼らの非凡な事業のうち、真に値打ちのあるものは、ただこの流れに沿って行われた事業だけだ。 》 192頁

《 自分の行動を振りかえって見て、損得からではなく、道義の心から「しまった」と考えるほどつらいことは、恐らくほかにないだろうと思う。 》 255頁

 最後の引用、胸にじいんと沁みる。社会への深い洞察が、物語に沿って違和感なく挿入される。子ども向き(『日本少国民文庫』全十六巻の一冊)に書かれたものだけれども、大人になった人が我が身を省みる本としてまことに相応しい。それにしても、今の状況そのまんまじゃ、と思ってしまう。また、「協働」という言葉をすでに使用していることに驚く。他にも引用したい箇所がいくつもある。

 ネットの見聞。

《 シンガポールって「明るい北朝鮮」と呼ばれているんですよね(ということは北朝鮮は「暗いシンガポール」?)北朝鮮金王朝独裁を批判する人たちもシンガポールの李王朝の独裁についてはノーコメントです。それがわかると「シンガポール化」に支障が出るからと思ってるからでしょうか。 》 内田樹