エコール・ド・パリ殺人事件

 昼前にブックオフ三島徳倉店へ自転車で行く。東野圭吾麒麟の翼』講談社2011年2刷帯付、内澤旬子『世界屠畜紀行』角川文庫2011年初版、小林恭二・選『俳句とな何か』福武文庫1989年初版、計315円。

 深水黎一郎『エコール・ド・パリ殺人事件 〈レザルテイスト・モウディ〉』講談社文庫2011年初版を読んだ。450頁を一気読み。日本有数の銀座の画廊主が世田谷の邸宅の一室で刺殺された。それも密室で。本格ミステリの結構を備えた、古い皮袋に新しい酒を盛った小説。題名からうかがえるように、被害者はエコール・ド・パリの画家たちを美術界に広めようと、『呪われた芸術家たち(レザルテイスト・モウディ)』という著作を上梓している。その本の一部も紹介されていて、芸術とミステリが芳醇な香りを醸し出している。そして、お約束の「読者への挑戦状」。

《 滅びつつある古い形式を愛する者の一人として、児戯にも等しい諧謔心から、作者はこの頁をここに挟み込む。 》 331頁

 そして驚愕の真相。これは全くの想定外(まあ、考えてはいなかったけど)。

 法月綸太郎の解説から。

《 出だしの数章は、今風の警察小説というより、懐かしい昭和のユーモア・ミステリを彷彿させます。 》

《 本書の最大の特色は、この架空の美術書自体が、殺人事件の真相を解明するために必要不可欠なデータベースの役割を果たしていることです。いわゆる「作中作ミステリ」として、事件と書物の間にこれほど緊密で、鮮やかな照応関係を築いた作品は例がなく、隅々まで考え抜かれた構成に読者は舌を巻くことでしょう。 》

 そのとおり。十分堪能。「あとがき」から。

《 小説全体の構想を得るのとほぼ同時に作者は、仮にその架空の美術書の部分だけを抜き出しても、単独で存在価値のあるものにしなければ、面白くないと感じた。 》

 深水黎一郎との最初の出会いがこのミステリでよかった。芸術に関する論説がけっこう面白い。明日、いくつかを引用。

 22日に紹介したいいニュースは世界を駆け巡る。