バベットの晩餐会

 長崎・原爆忌。暑い。部屋は午前十時過ぎには三十二度。エアコンを起動。二十八度。涼しい〜。二十九度でも涼しく感じられる。外はどんだけ暑いか。34.2度。

 イサク・ディネーゼン(カーレン・ブリクセン)『バベットの晩餐会ちくま文庫1992年初版を読んだ。ノルウェーフィヨルドにある小集落の人々をめぐる、簡単な筋なのに、なんと深く複雑な内容だろう。心暖まる物語であり、人の性(さが)の深さをしみじみ実感させる小説だ。誰の上にも時間は等しく降り注ぐけれども、特別に濃密な時間はその人に化石のように滞留する。時は流れつつ流れない。最後のページで女性料理人バベットが心情を吐露する。

《 芸術家が次善のもので喝采を受けるのは、恐ろしいことなのです。 》

 「バベットの晩餐会」は1958年に、併録の「エーレンガート」は、死の翌年1963年に出版された。後者はファンタジーというかお伽噺というか、ハラハラドキドキさせ、重要な役回りの画家の落ちに微苦笑を浮かべさせる「そうきたか」。

《 植物は大地との結びつきを失うと、それでもたぐい稀な美しい花を一輪だけ咲かせることはできますが、その根は腐っていくのです。 》

《 彼女にしても身体の隅から隅まで大理石でできているわけではないのですから。 》

 どこかで使いたくなる言い回しだ。二篇ともじつによくできた小説、物語だ。解説で田中優子が書いている。

《 バベットやエーレンガートの中にはアルカイックな女性像がある。 》

《 料理が重要なのではない。それが芸術であるとき料理という手段は意識されず、しかし世界が変わってしまうのである。芸術家はそこにおのれを賭けるのだ。金で文化を移入すれば豊かになれるものでもない。 》

 ユトリロがパリの下町風景を描いたおかげで、ただの汚れた下町は芸術の色合いの濃い、あこがれの風景に変貌した。

 日が傾いてブックオフ長泉店へ自転車で行く。筒井康隆『座敷ぼっこ』出版芸術社1994年初版、山本夏彦久世光彦『昭和恋々』清流出版1998年初版、チャールズ・ブコウスキー『ありきたりの狂気の物語』新潮文庫2008年5刷、計315円。

 ネットの見聞。

《 意外なようだが、南アフリカ共和国はコーヒーではなく紅茶の産出国である。 》

《 [りんかい線からコミケに行かれる皆様へ] 大崎始発の後に臨時列車を2本増発します。土日は、1日当たり計31本増発。46,500人分の輸送力増強です。 》 りんかい線からの公式お知らせ

 ネットの拾いもの。

《 緊急地震速報発報
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  奈良県の深さ60kmでM7.8の地震が発生
  ↓
  奈良の大仏様が地震波を検知
  ↓
  大仏様が人知れず地震を打ち消す衝撃波を放射
  ↓
  奈良県民『揺れてません』
  ↓
  他府県民『誤報かよ』   》