吸血魔

 高木彬光『吸血魔』(芦辺拓・編『少年探偵王』光文社文庫2002年初版、収録)を読んだ。1950年、少年雑誌に連載。戦前中国大陸を荒らしまわった強盗団の残党が隠した財宝を巡る、戦後の川崎、東京を舞台にした誘拐殺人事件を、名探偵神津恭介が解決へ導く冒険探偵小説。手に汗を握る早い展開に読む手が止まらない。この数日読んできたもの全てが神津恭介もの。事件解決後、彼は呟く。

《  「人間の欲というものは、なんとかぎりがないものだろう。こんな金やダイヤを無事にかくすために、これだけの建物をたて、これだけの迷路をつくった人間もある。また、この宝がほしいばかりに、ああしておそろしい吸血蝙蝠の伝説をよみがえらせ、ああして命をおとした人間もある……人間の心の中から、欲がなくならないかぎり、まだまだこうした犯罪は、あとをたたないことだろう」  》

 巻末の芦辺拓の解説から。

《  思えば、エンタテイメント性の強い少年少女向け小説を出版するというのはなかなかに報われない仕事で、それは常に識者と称する連中や純文学志向の児童文学者たちの攻撃を避けられないからです。  》

《  題名に「王」だの「魔」「塔」、はたまた「黄金」「密林」といった文字が多用されるのは前近代的・非民主的だというような妄言が堂々と岩波講座『文学』を飾るありさまでした。  》

 児童文学はほとんど読まなかった。『少年探偵王』に収録されている漫画、河島光広『ビリーパック』は読んだ記憶。ラジオも聞いた記憶。「ビリビリパック」と呼んでいた。小学一年生の頃。

 ネットの見聞。

《  買取先でゴミとして処分されようとしていた荷からすんでのところで拾い出してきたものだが、日本の古本屋で調べるとちょっとびっくりするような値がついていた。   》 智林堂

 これが古本の面白いところ。

《   竹内栖鳳展行ってきた。面白かったし得るものは多かったが、全体として見れば、器用貧乏ですべて中途半端で終わった画家という印象。あらゆる手法をそつなくこなし日本画壇の頂点まで行った。昭和12年文化勲章、その年に「雄飛報國の秋」という軍国賛美の絵を書いている。夕陽が日の丸の絵。  》 森岡正博

《  「歴史修正主義」と言うと政治の論争になるのだけど、アートはむしろ歴史修正主義のカタマリ。というか、それまでの歴史を誰がどう書き換えそれを「正史」とするかの、闘争の歴史だった。  》 大野左紀子

《  歴史を書き換えるくらいの勢いのアート批評は後退した。一つには、歴史が循環していることが誰の目にもわかるようになってきたから(それを知らないで自分の作品を「これまでにない新しいもの」として提示するとバカにされる、というのがちょっと前まであった)。もう一つは批評というもの自体が読まれなくなってきたから。  》 大野左紀子

《   アートマネージメントの領域は、圧倒的な欧米の牙城。新興富裕層の登場で大きく変容するアート市場の東西バランスの中で、新たな潮流が生まれはじめている。「美」と「価値」をめぐる闘争は、アジアに舞台を移していくだろう。生産性と同時にマネージメントに期待したい。  》 原研哉

《  これから技術をどう作るかではなく,どうやって使うかという時代になっていく.そうするとこれまでのように技術の新規性というフレームワークでは評価できなくなってしまう.新しい評価軸を考えないといけない.  》 あの人

《   PC遠隔操作事件の片山さん、未決勾留が既に210日目、弁護士以外の接見禁止も続いているので家族にも会えない。検察による虐待というか人権蹂躙。確たる証拠が無いので起訴できない、否認しているから解放しない。公開処刑が無いだけマシだろうが、恐ろしい国、日本。  》 seaside

《   汚染水対策に470億円の国費投入の理由は「五輪招致への影響を懸念して、対策を急いだため」。これはどう見ても、本末転倒でしょう。五輪招致がなければ「急ぐ必要がない」と判断しているということですから。  》 内田樹

 6日(金)午後8時〜NHK総合(東海・北陸)で放送される『金とく』に源兵衛川の案内役で出演。