名短篇、さらにあり

 台風一過、晴天に青富士。ネットには台風の話題満載。淀川に転落流された子どもを中国人留学生が救出、靖国神社の大木が倒れ、作業員が下敷きとか。いずれも軽症という。もんじゅへの一本道が土砂崩れで通行、通信不能。古くは1960年ローマオリンピックの年、五つの台風が日本を囲む五輪台風。いやはや。

 北村薫宮部みゆき 編『名短篇、さらにあり』ちくま文庫2008年初版を再読。収録作品。

   「華燭」    舟橋 聖一
   「出口入口」  永井 龍男
   「骨」     林 芙美子
   「雲の小径」  久生 十蘭
   「押入れの中の泉鏡花先生」 十和田 操
   「不動図」   川口 松太郎
   「紅梅振袖」  川口 松太郎
   「鬼火」    吉屋 信子
   「とほぼえ」  内田 百けん
   「家霊」    岡本 かの子
   「ぼんち」   岩野 泡鳴
   「ある女の生涯」  島崎 藤村

 うーん、再読しても感想は変わらない。深い感銘を覚えるとか、愛着一入というものではない。小説に求めるものが違うのだろう。川口松太郎「紅梅振袖」に最も惹かれた。半村良が好きだという『人情馬鹿物語』の一篇。同じ作者の「不動図」にはいずこも同じと、苦笑い。

《 テレビを置くとかステレオを置くとか、本が増えて置きどころがなくなると、新しい書棚を壁へ並べてしまう。壁面は狭くなるばかりで大きな画をかける場所もない。 》

 雨過天青。気持ちよい風。自転車も軽い。ブックオフ長泉店で二冊。森奈津子『先輩と私』徳間文庫2011年初版、矢作俊彦『複雑な彼女と単純な場所』新潮文庫1991年2刷、計210円。前者、裏表紙の紹介から。

《 笑いとエロスの融合を遂げた、著者の真骨頂。女だらけの官能小説。 》

 ぞくぞくするなあ。十短篇を収録。「先輩と私」には四方田犬彦『先生とわたし』を連想。発表はほぼ同じみたい。内容はまるでちがう(と思う)。他の題も面白い。「妄想クローゼット」「サディスティック・ロリータ」「逆転エロチカ」「愛欲の企画倒れ」「「官能私小説の書き方」「美少女地獄変」「天国に一番近い四畳半」。

 ネットのうなずき。

《 「東京オリンピック」と聞けば、真っ先に中止になった戦前のそれを思い起こす古本屋ですが、何かを行うための免罪符、鬱積した空気のガス抜きに、国家的プロジェクトや世界規模のスペクタクルを利用するのは権力の側の常道であるとはいえ、しかし、ふりかえって見れば、こうした すり替え・すげ替えによって、見たくないもの・考えたくないもの、その先にある人たちまでをも あっさり捨ててきたのが私たち歴史だったのではないか等々、本当に色々なことを考えさせられた今週でした。 》 古書日月堂