『絆回廊』

 プーさん、ディズニー、スヌーピー、全く縁がなかったなあ、と思うきょうこのごろ午前九時から水戸市からの視察の案内。カワセミに二度遭遇。昼ごはんを食べながらテレビを観ると、NHKBSの新作『怪奇大作戦』の宣伝をしている。いやあ、タマランなあ。でも観ない。NHK名古屋の黒崎めぐみアナからは源兵衛川取材時のツーショットの写真。ネット注文してあった山口晶『アウグスティヌス講話』新地書房1987年3刷帯付が届く。送料込み570円。

《  山田晶アウグスティヌス講話 (講談社学術文庫) 』を読んだ。これは第1章からは予想もしなかった名著である。アウグスティヌス道元を比較対象した箇所、悪についての箇所、創造についてなど、得るところがたいへん多い。すばらしい。 》 森岡正博

 午後、十一月の視察の下調べに来た人たちとグラウンドワーク三島事務局で挨拶。その後知人の車に同乗、隣町函南町のお寺へ。展覧会の申し込みと打ち合わせ。なんやかやと慌しい一日。

 大沢在昌『絆回廊』光文社2011年初版を一気読み。息つく暇もないぞくぞくする展開。じっくり熟成された酒は一息で飲み干すのはもったいないけど、やっぱり一気に飲んでしまう、傑作ハードボイルド・エンターテインメントだ。

《 「まったく、新宿って街は妙なところだ。いろんなことがあって、ばらばらに飛び散ったもんが、いつのまにかまた集まってきちまうのだからな」 》 254頁

 そのとおりだ。それぞれがまるで無関係に思われた事案が、ある一点で絡まっている。そこにやってくるクライマックス。

《 ──ファンをがっかりさせるのは嫌だよ。だからってファンを喜ばすためにだけに、同じような音楽をやっていたら、いつかやっぱり飽きられる。 》 262頁

 美術でも同じこと。ここは難しい。

《 たとえどうなろうと、自分にできることをやるだけだ。亡くなった者は、そこで立ち止まるが、生き残った者は前に進む。唇を強くかんだ。 》 425頁

 ハードボイルドだ。そしてこの一行は、大震災後につながる。一昨日の毎日新聞夕刊、文芸時評の書評家江南亜美子の書き出し。

《 東京五輪のように待たれてやがて終わるはずのイベントとは違い、震災はいつがその前日かも知らせずやってきて、有無を言わせず人々の生活を変える。出来事の前後で継続する時間。でもその圧倒的な断絶。 》

 『絆回廊』では事件前事件後、圧倒的な断絶がそれぞれの人物を襲う。それが物語に厚みをもたらし、複雑な味わいの読後感を与える。

 昨日のポケミス関連で。
《 当編集室のポケミスBEST 3は、クイーン『十日間の不思議』、J・D・カー『ビロードの悪魔』、ジョゼフィン・テイ『時の娘』。 》 藤原編集室
《 トマス・スターリング『一日の悪』、マーガレット・ミラー『これより先怪物領域』、マンシェット『狼が来た、城へ逃げろ』の3冊でも。(ポケミスらしい、といえばガーヴか「悪党パーカー」をひとつ入れたい気も」 》 同
 『狼が来た、城へ逃げろ』は、光文社古典新訳文庫で『愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える』という題で、中条省平の新訳が2009年に出ている。