『イェイツ詩集』

 アイルランドの詩人W・B・イェイツ Yeats(1865-1939)の詩(『世界詩人全集15 イェイツ/ロレンス詩集』新潮社1969年初版収録)を読んだ。前期を尾島庄太郎が、後期を大浦幸男が訳している。前期の短い詩を二篇。

《  「酒のうた」 A Drinking Song

   酒は口から入り
   恋は眼から入る。
   老いて死ぬまえに
   まさしく悟るはこれのみ。
   ぼくは盃に口をあて、
   あなたをみつめ、
   ためいきをつく。        》 尾島庄太郎・訳

  彼の詩はおそらく朗詠するための詩だろう。目からではなく、耳から入るようだ。

《  「青春と老齢」 Youth and Age

   若いころは 世間というやつに 責められて
   おれも 大いに 激怒した
   だが 今や 世間は おべっかつかい
   過ぎゆく客を 急がせる             》 尾島庄太郎・訳

 前期より後期の詩に惹かれた。しかし、問題は翻訳。六十三歳に出版された詩集『塔』収録の一篇冒頭二行の二つの翻訳。

《  「ビザンチウムへの船出」
   あそこは 老人のための国ではない 若者たちが
   互いの腕に抱かれ 樹々には 小鳥が囀っている    》 大浦幸男・訳

《  「ビザンティウムへ船出して」
   それは老人の住む国ではない。
   かいな組み交わす若人たち、木々の百鳥、    》 尾島庄太郎・訳

 尾島庄太郎・訳は『世界文学全集48 世界詩集』講談社1972年初版収録から。私の好みは尾島庄太郎・訳だ。別の詩、冒頭四行。

《  「リーダと白鳥」
   さっと飛び来たり すばやく旋回 舞いつつ
   白鳥は下降し その黒い水かきの足で
   女のか弱き腿をはさむ その力強きくちばしは
   無力な彼女の顔を じぶんの胸に押しつける    》 大浦幸男・訳

《  「レダと白鳥」
   突然の衝撃。大きな翼は、よろめく姫の上に、なおも
   羽搏き、姫の腿は、かぐろい水掻で愛撫され、
   姫の項(うなじ)は白鳥のくちばしにとらわれる。
   白鳥は、姫の護るすべなき胸を己が胸にひたと抱く。   》 尾島庄太郎・訳

 真夏日ブックオフ長泉店で二冊。吉田健一『新編 酒に呑まれた頭』ちくま文庫1995年初版、アイザック・アシモフ編『ミニ・ミステリ100』ハヤカワ文庫 2005年初版、計210円。

 ネットの拾いもの。
《 今さらなんだけど、なんで週刊少年サンデーって、水曜日発売なんだろ。 》