『鷹の井戸』

 イエーツ『鷹の井戸 At the Hawk's Well 』角川文庫1989年2刷を読んだ。イエーツの表記は、訳者松村みね子による。表紙折込の紹介。

《 本書は、わが国の能舞台にヒントをえた作品として広く知られる。古色ゆたかなアイルランドに生まれた薄明の詩人イエーツがケルト神話をもとに描いた幻想と神秘の物語。 》

 一幕ものの戯曲、『カスリイン・フウリハン』『心のゆくところ』『鷹の井戸』の三作を収録。前二者が家庭の悲劇に対して、『鷹の井戸』は高い象徴性、深い幻想性を有する。そして三作とも儚さと無常性に覆われている。舞台を観賞しないと、作品の奥行きは……とらえようがない。読むだけでは、我が身の乏しい想像力を痛感するのみ。

 松岡正剛『フラジャイル』筑摩書房1995年初版を開く。『鷹の井戸』にふれた箇所を再読。

《 西洋能『鷹の井戸』はイエイツが日本の能から吸いこんだ胸いっぱいのフラジリティを吐露した作品である。 》 72頁

《 一九一五年に執筆、一九一七年には出版された。 》 70頁

《 日本語には最初は平田禿木が、ついでは松村みね子が名訳をはたした。 》 70頁

 葛原妙子『鷹の井戸』白玉書房1977年を開く。「鷹の井戸」の章から。

《  大き鷹井戸出でしときイエーツよ鷹の羽は古き井戸を蔽ひしや

   まぼろしにちひさきこどもをみてしより老い人は孤独に襲はれしなり  》

 「覚えがき」から。

《 物語はケルトの若き英雄クーフウリンが永遠の命を得ようとして一羽の怪しい女鷹の守る井戸の水を掬みにやってくるのだが、妨げられて果たさず遂に差ってゆく話である。 》

 歌人はそれを日本の舞台を観ていた。

《 更にくだって一九三九年、つまり昭和十四年十二月三日、三十二歳の筆者はとつじょ、くだんの「鷹」に逢う。 》

《 そこでいま、四十年に近い昔の一夜のリサイタルからは何の「音」もきこえてこない。 》

《 思えばすべては美し過ぎたもののようである。 》

 ここで歌人がイェイツやイエイツではなく、イエーツと表記するのは、訳者松村みね子(本名片山廣子)への敬意という気がする。気になる作家の一人。

 ネットの拾いもの。

《 日本三大珍名若手女優  剛力彩芽能年玲奈本仮屋ユイカ (次点に貴地谷しほりと蓮佛美紗子 》

 ブックオフ沼津南店で六冊、洲之内徹『さらば気まぐれ美術館』新潮社1988年4刷、山田正紀『チョウたちの時間』角川書店1979年初版帯付、ハンス・ヘニー・ヤーン『十三の不気味な物語』白水社1974年9刷帯付、戸松淳矩『剣と薔薇の夏(上)』創元推理文庫2005年初版(これで上下揃った)、似鳥鶏『いわゆる天使の文化祭』創元推理文庫2011年初版、アンドレ・ブルトン『黒いユーモア選集 2』河出文庫2007年初版、計630円。