『日本史を読む』つづき

 台風一過。真夏日毎日新聞朝刊第一面にやなせたかし死去の記事。作品論をだれが最初に書くだろう。「子どもたちの愉快な芸術祭」アート長光寺 Vol.1の個人向け葉書を投函。

 丸谷才一山崎正和『日本史を読む』中公文庫2001年初版、つづき。

《 丸谷 そこで男色の話ですが、院政期の宮廷では女色だけではなく男色も当然盛んで、これについては五味文彦さんの研究が最近、注目すべきパイオニア的業績挙げているんですね。まず『院政期社会の研究』の中の「院政期政治史断章」、これが評判になった。 》 86頁

《 丸谷 さらに面白いことに、五味さんは後白河法皇の男色の相手を研究しているうちに、神護寺にある藤原隆信筆の後白河法皇の似絵(にせえ)を囲んでいた、四点の似絵に描かれている四人の男──平重盛藤原光能(みつよし)、平業房(なりふさ)の三人は確実に後白河院の男色の相手に気づいた。とすれば四人目の源頼朝もまた、男色の相手ではなかったか。
  山崎 義経は違ったんですか。
  丸谷 義経はまだ小さいもの(笑)。 》 87頁

《 丸谷 室町時代に始まったものとして、生け花、茶の湯水墨画、能、狂言、座敷、床の間、掛軸、庭、醤油、砂糖、饅頭、納豆、豆腐……こういうふうに、いろいろある。
  山崎 四條流の包丁道から小笠原の礼法まであります。
  丸谷 いっぱいあるんです。こうしてみると、現代日本人の大筋のところは、みんな室町時代に始まったといっていい。 》 102頁

 林屋辰三郎『町衆』中公新書1964年を話題にして。足利時代のこと。
《 山崎 私が『町衆』を名著だと思うのは、日本に市民というものが存在しかけていたことを、この時期ここまで大胆に語った本はほかになかったからです。ちあみに、当時のいわゆる国史学会の主流を占めていたのは、封建制に対する農民の反乱という図式であって、「善玉=農民、悪玉=封建領主」というマルクス主義のマンガのようなものが流行っていた時代であります。
  丸谷 ハッハッハ。
  山崎 しかし林屋さんは敢然として「町衆」というものを発見した(笑)。いやほんとです、戦後の都市史は林屋さんをもって嚆矢とするようなものです。
  丸谷 そうですね。 》 166-167頁

 マルクス主義のマンガのようなものが流行っていた時代に歴史教育を受けたので、それから解放されるのにえらく苦労した。本棚から林屋辰三郎『日本史論聚 一 日本文化史』岩波書店1988年初版と同『日本史論聚 八 芸術の周辺』同を持ってくる。ブックオフで105円で購入した。開いてはみるが、読むには時機尚早この本では網野善彦『異形の王権』平凡社1986年初版、石川淳『江戸文学掌記』新潮社1980年初版、隆慶一郎影武者徳川家康』新潮社1989年初版等が高く評価されているが、どれも新刊で買ってそのまま。そろそろ読む時機か。うーん。

 ブックオフ長泉店で二冊。キャサリン・ブラックリッジ『ヴァギナ 女性器の文化史』河出書房新社2006年4刷帯付、J・G・バラード『コカイン・ナイト』新潮文庫2005年初版、計210円。後者は単行本で持っているけど、一冊だけじゃあ、カッコ悪い。

 ネットの見聞。

《 二階の倉庫にあがり、戸を開けるが、一歩も中に入れないので、廊下でひとり佇む。この前、ある古本屋さんに、中を見られ、「えらいことになってますね」と言われる。やっぱりだれが見てもそうなんだ。 》

 ネットのうなずき。

《 再読はいつも楽しい。新しい本を読むより、時として、楽しい。 》

 ネットの拾いもの。

《 一休さん、二回休んだら連休というあだ名がついた 。 》