『まんが集 無口なボオ氏』

 昼前、味戸ケイコさんから電話。一時間あまり、やなせたかし氏や味戸さんの新作について語らう。味戸さんへ某文庫本を郵送。

 昨日購入したキャサリン・ブラックリッジ『ヴァギナ 女性器の文化史』河出書房新社、藤田真利子の「訳者あとがき」の結び。

《 著者は、そうした飾りや覆いを取り去ったヴァギナのありのままの姿を見てほしいと思ってこの本を書いた。ここは間近に寄ってじっくりと見つめてみてはどうだろう。だいじょうぶ、噛みついたりはしないから。 》

 J.K.Potterの写真「PUSSY」1990年は、股間が噛みつきそうな猫になっている。ネットでも画像が見られるが、手元の本のその解説。

《 「PUSSY」はメタファーともリアリズムともとれる作品だろう。 》

 姫野カオルコ『受難』文春文庫2002年初版、裏表紙の紹介文から。

《 修道院で育った穢れなき乙女フランチェス子のオ×××に人面瘡がデキた! 「お前はダメ女だ」と朝な夕なに罵倒する人面瘡を、けなげにも”古賀さん”と呼んで共同生活をするフランチェス子の運命やいかに? 》

 姫野カオルコの九日のブログから。

《 「姫」には「性器」「セックスする」という意味があります。薫子や馨子ではなく「カオルコ」と片仮名にすると「オマンコ」に似ています。「カラオケ」にも似ています。「オカルト」「コミカル」にも似ています……と、こういう話は、すでにエッセイに何度か書きました。じっさいのところエッセイでも小説でも、私の書いたものを読んだ人は、オマンコでカラオケでオカルトでコミカルだと思う人が多いのでした。 》

 そういえば藤田真利子「訳者あとがき」の一文。

《 だが「われめちゃん」はじめ、さまざまな候補が上がったが、定着したものはひとつもなかった。 》

 やなせたかしたちが「われめちゃん」という呼び名を考案した。そのやなせたかしの絵画論はちょっと難しいだろうなあ、と思う。私なら雑誌『詩とメルヘン』の表紙絵は面白くないから外して、四コマ漫画やカット絵に見られる線描の特徴から論じたい。やなせ・たかし『まんが集 無口なボオ氏』サンリオ1976年初版に見られる描線は、一見無造作にささっと引いているように見えるが、全体を俯瞰すると、そのどうってこともなく見える描線が、じつは面白い。なんの味付けもない、真水のような印象。三十年以上前なのに不変の真水、時代臭のない描線なのだ。谷岡ヤスジの晩年のマンガにも通じる簡潔な描線だが、内容はまるで違うのが面白い。巻末のことば。

《 ぼくの詩も絵もメルヘンも/またその他のすべての仕事も/原型はこの漫画集の中にある/ぼくはここから出発したが/帰っていくのもまたここしかない 》

 ネットの見聞。

《 夜中、寝床で新潮文庫の足穂を読む。これもカバー(小浦昇)と本文組の変わった新版で読みやすい。しかし、この『一千一秒物語』、めったに見ない。 》 岡崎武志

 本棚には 『一千一秒物語新潮文庫1969年初版。当時新刊で購入。370頁定価160円。上記の新版は662円。約四倍。松井実の解説にこんな一節。

《 同じくA感覚を取扱った『少年愛の美学』(一九六八)にしても、いったんは第四回谷崎潤一郎賞(一九六八・中央公論社)候補になりながら、その難解さゆえに受賞しなかったが、「プラトーンの『饗宴』以来の、最初のワーク」と語る足穂の意気ごみが世人に認められない訳はなく、日本文学大賞(一九六九・新潮社)受賞以後は、特に若い人の間でA感覚が注目されはじめた。 》

 『増補改訂 少年愛の美学』は角川文庫から1973年に出た。当時の角川文庫にはしおり紐が付いていた。350頁定価240円。次いで河出文庫から1986年に出たが、手元にあるのは1999年の新装初版。320頁640円(税別)。

《 本書は最終稿(角川文庫版)に準じたが、「少年愛の美学」は以下に示した形で発表された。》

 新潮文庫では出なかった。値段の変遷を見ると、文庫は物価全般をぐっと上回る上昇率。買うのに躊躇するわけだ。

《 批評の世界ってどうもよく分からないのだけど、その作家や作品にないものを指摘して、ないことを批判するのだろうか。そうだとすると、なぜあるものについて語らないのかと思うし、それだとただ作品や作家をだしに、ただ自分の欲望の在りようを展開させたいだけのように見えるのだが。 》 西崎憲

《 タンゴのダンス規制について警察庁は、「規制を法律から外すと、ダンス教室と称して『水着の女子高生と抱き合って踊れる』といった営業をされる可能性がある」 》

《 小泉純一郎は、安全装置をはずし、定期点検の間隔を広げ、原発ロボットを破棄し、国内唯一の原発耐震テストができる施設を撤去したことについてその過失を認め、謝罪しましたか? 》

《 破壊する力は建設する力の何百倍も強いから、全能感を求める人間は必ず破壊するようになる。 》

 ネットの拾いもの。

《 過去、"L"の発音を教えてた時の事。"L"を使う単語として"Love"だとか"Cloud"だとかで練習しても全然上達してくれないのに、"Lux Super Rich"で練習するとLとRの発音が両方とも瞬時に改善されたという怪現象を経験したことがある。 》