『一刀斎の古本市』

 森毅『一刀斎の古本市』ちくま文庫1996年初版を読んだ。古本の話だと思ったら、違った。「あとがき」から。

《 「古本市」といっても昔の本ばかりというわけではない。本というものは、読んでしまえばもう古本である。そして、その本の内容からいくらか離れて、勝手なことを考えはじめる。それを文章にすればエッセーになる。 》

 軽快で明快な文章。愉快で、目から鱗が落ちた、ずいぶん。そうかあ、と気が楽になる。からだがほぐれる。いい本だ。

《 人生は楽しまなきゃ損。一貫性なんかどうでもええ。 》 194頁

《 現代の文化は、編集によって成り立っている。 》 219頁

《 いま当然のように考えていることが、ほんの少し前では、とても変わった考えだったことがわかる。ということは、当然のことに、百年後に見れば、今の当然さも変わるに違いない。文化の文脈で見るとは、そういうことである。 》 181頁

《 人間が生活規範と考えたり、道徳倫理と信じたりすることに、歴史の、それもごく最近の歴史の思い込みがないか。 》 43頁

《 そして、なにより〈生命〉というものについて、空想と夢を育んでほしい。イデオロギーや倫理は、そうした夢の翼にのっからねば、すぐにひからびてしまう。 》 38頁

《 反戦や反天皇というのは、たかがイデオロギーであって、運動家の日常になってしまっては、たいして迫力もない。 》202頁

《 ヒューマニズムという旗が、ときに眼の鱗となることもあるものだ。 》 32頁

《 考えてみれば、ピカソだってゴッホだって、路上を観察するように眺めてよかったはずだ。芸術を日常に解体して、そこから始まるのが芸術なのだから。 》 226-227頁

 ブックオフ三島徳倉店で二冊。北森鴻写楽・考』新潮社2005年初版帯付、東川篤哉『ここに死体を捨てないでください』光文社2011年6刷帯付、計210円。

 ネットのうなずき。

《 ここ数日団体/公募展をとやかく言うTLを見掛けましたが、結局作品はいいか悪いかです。 》 椹木 野衣

 ネットの見聞。

《 20数年前、美術予備校の講師にある生徒が「売り絵なんか描いていて面白いんですかっ!」と喰ってかかったらその講師が、「売り絵が売れないんだよ。」っていった話しを急に思い出しました。 》

《 そんな中、引っ越し用に梱包した等身大ドールの荷を解こうと思うが、やはりどう見てもアレだ。引っ越し業者の人もめちゃくちゃ怪しんでた。そりゃそうだ。どう見てもアレだ。

  なんかこう「デッサンのためにこれが必要だったアーティストづら」で通したので、いまさらオリエント工業とは言えなかったのです。 》

《 輪堂寺耀『十二人の抹殺者』(戎光祥出版/ミステリ珍本全集2、11月下旬刊)「鮎川哲也が復刊を熱望していた幻の純粋探偵小説「十二人の抹殺者」が53年ぶりに復活。二つの屋敷で次々と起こる連続殺人事件に挑む名探偵・江良利久一の推理。「人間掛軸」を併録」 》 藤原編集室

《 電力総連支配の民主党も、自民党と変わらない東電分社化案で原発だけ切り離す廃炉専門機構を作る。原子力損害賠償支援機構法の見直しをさぼり、経営・株主・貸手責任を問わず、賠償や除染費用も税金で負うというのか。だから国民が拒否する党なのだ。 》 金子勝

 ネットの拾いもの。

《 米倉涼子「私、失敗しないので」(視聴率的に) 》