『中途半端な密室』

 秋冷と呼びたくなる雨の一日。部屋に溜まった本を目視。へえ〜、こんな本を買ってたのかあ。記憶力の衰えを痛感。というよりも整理しろよ、だなあ。しかし整理しようもない。せめて作家別に置きたいが、これまた面倒也。本の塔のてっぺんに吾妻ひでお『ぶらぶらひでお絵日記』角川書店2012年初版がある。これは読んだ記憶がしっかりある。その下のぼうを本の塔の隙間から覗き見ると、『失踪入門』徳間書店2010年初版が。読んだかどうか記憶なし。困ったことだが、読んであったとしても、再び楽しめるんだから、これはこれでよし。それにしても吾妻ひでお、『失踪日記イースト・プレス2005年でブレークしてから、『うつうつひでお日記角川書店2006年、『逃亡日記』日本文芸社2007年、『うつうつひでお日記 その後』角川書店2008年と手元にある新作だけでこんな出している。自分の生活を描いてこれだけ出版されるというのは珍しい。まあ、どれも読ませるんだからワカル。

 東川篤哉『中途半端な密室』光文社文庫2012年初版を読んだ。デビュー作品の表題作を含む「南の島の殺人」「竹と死体と」「十年の密室・十分の消失」そして「有馬記念の冒険」の五篇を収録。軽いユーモアの本格ミステリ。私の好きなかたちだ。どれも面白いが、「十年の密室・十分の消失」がとりわけ大掛かりなトリックで読ませる。なにせ、十分足らずでアトリエとして使っていた丸太小屋が消失してしまうのだから。焼失ではなく消失。泡坂妻夫「砂蛾家の消失」を継承した本格(トンデモ)ミステリだ。後味もいい。「竹と死体と」には大坪砂男のトンデモミステリ「天狗」を連想。いやあ面白かった。

 ネットのうなずき。

《 まあ年齢を重ねていやだなと思うのは、身体の回復力がなくなってきている、ということ以外にはないのだけど。若い頃に戻りたいとはまったく思わない。絶対、今の方がいい。 》

 ネットの見聞。

《 たとえば、以前は十万円もしていた全集が、いまは一万円もしないという話をよく聞きます。そういう変化が顕著な十年でした。手放す人はいても、それを求める人がいない。価格の向こう側で、人は入れ替わっています。 》 内堀弘

 古本業界では変化がこんなに激しいのに、美術業界では価格変動がじつに遅い。そんな停滞は世代交代の波で、気がつけば一気に激変しているだろう(と思いたい)。

《 バンクシー(Banksy)が、10月13日、ニューヨークの路上で、スプレーアート作品を破格の1枚60ドル(約6000円)で販売するゲリラセールを行った。バンクシー作品であるということは一切隠して、販売人も普通のおじいさん。
  バンクシーの作品は数千万から億という値段で取引されることもある。しかし約7時間の販売でお客さんは3人、売れた絵は8枚、売り上げは420ドルという結果に終わった。
  アートの価値は分かり難い!今回売れたバンクシーの作品は、現在取引されている価値で換算すると22万5000ドル(約2250万円)
  彼の作品は「落書き」だと思う者は多いが、2007年2月に行われたサザビーズ主催のオークションではバンクシーの作品計6点が落札予想価格を大幅に上回る総額37万2千ポンド(日本円で約8500万円以上)で落札されている。 》 坂井直樹

 ネットの拾いもの。

《 神様が「いい加減にしろ」と肩を叩いて人類の歴史が終わる可能性 》