『密室の鍵貸します』

 昨夜、味戸ケイコさんからメール。

《 素敵な作品を教えて頂きましてありがとうございました! 》

 川端康成「片腕」に続いて、挿絵を描きたくなる小説を、という味戸さんの要望に応えて23日に送った、昭和初期の短篇をとても気にってくれた。やれやれ。

 寒々した雨。家こもり。

 東川篤哉『密室の鍵貸します』光文社文庫2011年11刷を読んだ。これは笑える本格ミステリだ。冒頭からこれ。

《 その街の正確な位置について、あえて詳細な地図を掲げることはやめておく。あえていうなら《千葉の東・神奈川の西》といったあたりにあると思っていただけらばいいだろう。 》

 そんなとこあるかあ(素樹文生『上海の西、デリーの東』新潮文庫がある)。事件の起こった河口にある港街の名は、その昔烏賊が獲れて烏賊御殿が建ったという歴史から烏賊川市。イカガワシい名前だ。小ネタやギャグ満載の私好みのミステリだ。題名からして映画『アパートの鍵貸します』のパロディだ。

《 流平は音楽には詳しくないが、茂呂が聴くのは大抵エアロスミス藤あや子だから、おそらくはエアロスミスのほうだろう、と判断した。もちろん正しい判断である。 》 70頁

 流平といい、茂呂が大の映画ファンで映像制作会社に勤めているということから……元映画会社員のバカミスキング霞流一を連想するのは、私だけではないだろう。内容はバカミスではなく、ユーモア本格ミステリ。これは面白かった。いい時間を過ごせた。

《 繰り返しの多いこの物語にも、どうやら決着の時が近づいていることを、すでに勘のいい読者のみなさんならば感じ取っているはずである。むろん勘の悪い読者だとしても残り頁の少ないことから考えれば、
  「ここからさらに死体が増えるようなことはあるまい──」
  というくらいの予想は立つだろう。事実、そのとおりである。終わりは近い。 》 238頁

 そして急転直下の真相解明。こういうトリックかあ。今月初めに鑑賞した映画『ニューシネマパラダイス』成立のいきさつを連想。動機もあり得ることよ。

 ネットの見聞。

《 【PC遠隔操作】10月25日第6回公判前整理手続について報道した主要メディアはありませんでした。毎月、公判前整理手続の後に弁護側会見があり、多くのメディアが取材していますが、続報ゼロの期間は3カ月以上に及んでいます。 》

  犯人が送ったメールに添付された猫の写真を片山さんの携帯電話から復元した証拠がないことを検察官が認めていたことが分かりました。主要メディアは報じていません。 》

《 先週の公判前整理手続で、検察側は少なくとも延べ66人の証人を申請する方針を明らかにしました。初公判は来年になる見込みで、片山さんは2月の逮捕以後、家族を含め接見禁止が続いています。こうした事実は全く報じられていません。 》

 日本報道検証機構 http://gohoo.org/news/iesys/

《 「『首相動静』報道は『知る権利』を超えている」これは自民党小池百合子氏の発言。「赤旗」が首相と大手メディア幹部との会食が繰り返し行われている実態を報じ、なれ合いを厳しく批判していたが、こういった政府に都合の悪い情報は何でも「秘密」にできる「秘密保護法案」の本質を良く表している。 》