『百句燦燦』

 ジャック・プレヴェール『小鳥のはこんできた手紙』サンリオ1976年初版は、訳=サンリオ出版部。一昨日取りあげた「朝の食事」の結びの部分。

《  レインコートを
   きた
   そとは雨だったから
   そして あのひとは
   雨のなかをでていった
   なにもいわずに
   あたしをみもしないで
   それから あたしは
   あたまをかかえて
   泣いた         》

 一昨日の小笠原豊樹の訳詩を読んで、女が出て行き、男が取り残されたと思っていた。この訳詩では逆……。あれまあ。

 一日に続き、塚本邦雄『百句燦燦』講談社文芸文庫から。

《  眼に古典紺紺とふる牡丹雪   富澤赤黄男(かきお)  》

 この句に眼を射抜かれた。こんな凄い句を全句集で見逃していた。不明を恥じる。というより塚本邦雄の眼は凄い。

《 赤黄男の句集は『天の狼』一巻に盡きる。 》
《 『天の狼』に新興俳句臭はない。あるのは新しい俳句の香りであり、その香りを満たした俳句なる詩型の輝きであらう。 》
《 「眼に古典紺紺とふる牡丹雪」この作品の点睛は一にもニにも「紺紺」なる造字の妙にあらう。 》

 解説で橋本治はこの句について「私を魅了した。」と縷縷書いている。頷くことしきり。そして連想するのは、白浦十郎太の歌。

《  霏霏霏霏と書きならべたり妖(うつく)き雪霏霏とふるかぎりもあらず  》

 紺紺(こんこん)に対して霏霏(ひひ)の雪。白浦十郎太の歌は、雑誌『短歌』角川書店1983年5月号、「短歌公募館」塚本邦雄選で特選に選ばれた作品。

 ネットのうなずき。

《 傍受・防衛相:驚き。この人日本守る気あるんかしらん、5日NHK「小野寺防衛大臣は、”あくまで報道。米国政府がそのようなことを言っているとは承知してない。同盟国間も含め、様々な友好国との信頼を傷つけるような行為は決して望ましいことではない。報道は信じたくない”と述べました」。ああ 》 孫崎享

 ブックオフ長泉店で二冊。多木浩二『ヌード写真』岩波新書1992年初版帯付、スティーグ・ラーソン『ミレニアム3 上』ハヤカワ文庫2012年16刷、計210円。