『森のバルコニー』

 9日に取りあげた佐々木邦(くに)の出生地の誤りについて清水町図書館から返事のメールが届く。

《 ウィキペディアにつきましては、個人のボランティアの記述に基づく記事ですので、訂正の依頼は控えさせていただくことをご理解いただきたいと存じます。 》

 あれま。間違った出生地のまま放置かい。

 強い向い風なので、風当たりの弱い道を選んでブックオフ沼津リコー通り店へ自転車で行く。文庫本を五冊。大岡信『瑞穂の国うた』新潮文庫2013年初版、太田忠司(大矢博子・編)『探偵・藤森涼子の事件簿』実業之日本社文庫2012年初版、佐高信『文学で社会を読む』岩波現代文庫2001年初版、島田荘司写楽 閉じた国の幻 下』新潮文庫2013年初版、山口雅也『モンスターズ』講談社文庫2011年初版、計525円。帰りはどうだ追い風。楽。

 大矢博子の解説が目当てで買った『探偵・藤森涼子の事件簿』は、二十年にわたって続いている藤森涼子シリーズからの選集。以前短篇集『遊戯の終わり』『追憶の猫』そして『カッサンドラの嘲笑』を読んで好印象をもった。他にも本があることを知る。探しましょう。

 以下のネットの書き込みを見てジュリアン・グラック『森のバルコニー』白水社1981年初版を半分ほど読んだ。第二次大戦初期、フランス北部ベルギーとの国境そばの森に隠れているトーチカに駐留する若い兵士の物語。時は秋。日本の秋との違いを思う。そして雪。文章がじつに濃密、ゆっくり味わってしまうので、読書はぐっと低速に。今日中に読み終えるのは無理と知る。

《 叢林の短く固い小枝には風の力もおよばず、雪は何週間も崩れ落ちもせず白く毛虫の這うようにとどまっていた。融けて滴ろうとする雪は長い夜の寒気でそのまま凍りつき、ほっそりした棒状をなして枝から垂れていた。地上の凍てつきによって清浄を保つ大気のなかで、何日も何日も「屋根地帯」は白雪に覆われていた。あるいは重いあるいは軽い雪の塊を散りばめ、銀の小蜘蛛の糸を、霧氷の朝明けの白く長い氷の線細工をきらめかせていたのである。祝祭のような風景の上には濃い青をたたえた空がまばゆく澄んでいた。大気は清冽ながらほのかに温い。 》 中島昭和・訳

 秋の描写で浮かんだ拙句。 陽射しありらりるれろいろちりぬるを

《 岩波文庫の1月予定にジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』(安藤元雄訳)。 》

 この本は持ってない。岩波文庫は好みを突いてくる。困ったことだ。

 岩波書店の新聞広告、『岩波講座 日本歴史』全22巻の惹句に一吐息。

《 前講座からニ○年、一新された日本史像 》

 二十年で一新。昭和は遠くなりにけり。