『森のバルコニー』つづき

 最近記憶力は衰え、注意力は散漫になってきた。昔からだ、と聞こえてくるがそれは無視して。ブックオフで痛感。昨日も津原泰水ルピナス探偵団の当惑』原書房2004年初版を手に、以前買った本とは違う気がするが……しばし悩んで棚に返した。自宅の本棚には同じ本。買わないでよかった。文庫棚の『麺'Sミステリー倶楽部』光文社文庫2012年初版をしげしげと眺めて、買った記憶はないが見送って帰宅、見るとあった。ふう。散財せずにすんだ。

 今日も強風。それでも自転車で外出。ブックオフ長泉店で二冊。東川篤哉謎解きはディナーのあとで3』小学館2012年初版、島田荘司写楽 閉じた国の幻 上』新潮文庫2013年初版帯付、計210円。ホームセンターで買うものがあったけど、忘れてしまった。帰宅しても思い出さない。ま、いいか。

 ネットの同病。

《 本の山の中からこれ必要だからとよけておいたやつが、2分後にどこに置いたか思い出せない。 》

 本は寝転んで読む、という人がいる。寝転んで読むのは苦手。蒲団に入って読むのも苦手。電車のなかでは気が散ってろくに読めない。自室の椅子でゆっくり楽にして読むか、ライティングデスクの書見台で読むか、どちらか、だ。

 ジュリアン・グラック『森のバルコニー』白水社も、寛いで読んだり、机に向って読んだり。文章をじっくり味わうには机だ。

《 雨にぬれた夜明けのパリは、暗く薄汚れていてとりつくしまもないほど冷たく眼に写った。 》

《 パリはもはや一つの駅にすぎない。列車を待つ間の一時を過ごす待合室。 》

 静かな十月から年を越して春。

《 だがこちらのほう林道を舗装してある古いアスファルトが、眼の前十メートルほどのところで突然奇妙な音を立てはじめた。自分が機銃掃射を受けているとわかるまで一秒か二秒かかった。 》

 ドイツ軍の攻撃、壊滅、負傷、敗走。

《 まさに文字どおり人にはぐれ、あらゆる日常の軌道からはずれてしまった。もはや一人として自分を待つ者はいない、絶対に、どこにも。 》

 みごとな小説だ。戦闘場面は最後の部分だけ。ほとんどを占める森閑たる広大な森との濃密な交感。傑作だ。新刊で購入して三十年余。この歳だからわかる真価。

 ネットの見聞。

《 特定秘密保護法案が衆院を通過しそうです。それについて書きました。いったい「誰が」こんな法案の早期可決を求めているのでしょう。有権者の80%が「慎重な審議」を求め、85%が「政府は都合の悪い情報を隠蔽する」と「思う」と答えているのに。 》 内田樹

《 これだけ露骨にアメリカに隷属して、これだけ露骨に冷遇されている安倍晋三を世界の政治家はどう見ているのだろう。舐められているのは火を見るより明らか。だから中国、韓国は鼻も引っかけない。笑顔で迎えるのは金がもらえるASEAN諸国だけ。 》 藤岡真