『ふらんす小咄大全』

 カミ『エッフェル塔の潜水夫』筑摩書房1969年初版を久しぶりに再読しようと、本棚の奥をごそごそのぞいたら、昨日の本の元版『ボートの三人男』筑摩書房1969年初版帯付が出てきた。あれれ。発売当時に買った本だ。その隣には河盛好蔵・訳編『ふらんす小咄大全』筑摩書房1970年6刷が。覗き見。

《 マリー・シャンタルがディオールの店で、ドレスの仮縫いをしていた。亭主のジェラールはそのドレスがこっけいだといって、身をよじらせて笑った。
  ──お嬢さん、と彼女は売子にいった。あの人にドレスの値段を教えてやってちょうだいね。そうすれば静かになるから。 》

《 エデンの園でアダムとイブがものすごい夫婦げんかをやったあげく、ついにアダムはどなりつけた。
  ──うるせえな、だまれったらだまれ。だまらねえと、おれはアバラ骨一本抜いて、もうひとり女をこしらえちまうぞ。 》

《 テレビにフォリー・ベルジュールの踊り子たちが半裸体の姿であらわれた。
  ──さ、もう寝る時間ですよ、と母親が子供たちにいった。この人たちも、もう半分きものをぬいでるでしょ。 》

《  ある建物の壁に次のようなポスターが貼られた。
  「アルコールは緩慢に人を殺す毒素である。」
   その翌日、だれかがその下に次のように書き加えた。
  「結構、結構、ぼくらはちっとも急がない」      》

 「あとがき」のこんな助言を覚えている。

《 頭のなかでくり返し練習してからでなければ話を始めてはならない。 》

《 だれかが話を始めたとき、嬉しそうに、「ぼくその話を知ってるよ」というのは、とくに禁物である。 》

 用事を片付けるついでに、その先にあるブックオフ函南店へ先に寄る(ふつうは逆だろう)。坪内祐三『文庫本福袋』文春文庫2007年初版、松尾定行蒸気機関車 再発見の旅』ちくま文庫2000年初版、計210円。前者をぱらぱらと読んで行くと、2002年にレオポルド・ショヴォー/出口裕弘訳『年をとったワニの話』福音館文庫が。この元本(1986年)は持っている。紹介文の結び。

《 この部分の出口訳の官能は各自でチェックしてもらいたい。 》

 はいはい、チェックしました。やっぱり好きになれない話だ。栞で三木卓は書いている。ショヴォーは1870年生まれ。

《 ショヴォーはやはり激動の乱世としての悪意のなかを生きて死んでいかざるをえなかったアイロニカルな批評精神のひとつ、というべきなのだろう、と思った。 》

 ネットの見聞。

《 数十万件あるといわれる特定秘密だが、その中心はやはり現行憲法に抵触する可能性のある案件であり、特に「戦争」案件だろう。現状では不可能な、「戦争」を準備し、具体化してゆくための文書作成や同盟国との謀議が秘密裏になされるということ。 》 平川克美

《 社会保障費がないない!と財務省中心に不安を煽って騒ぎまくった結果、やることになった消費税増税。それに合わせて行われる政府の経済対策の主だったのが『20年の東京五輪に向けた交通・物流網の整備、地域の公共交通充実などを各省庁が提案』っていうのはどうなのよ。 》

 風はびゅうびゅう。日が沈んでぐっと冷え込む。ネットの拾いもの。

《 ファンヒーターは灯油と電気と両方ないと動かないので、不安ヒーターです。 》