「架空庭園の午後」

 昨日林由紀子さんの個展「架空庭園の午後」の案内葉書が刷り上がった。そのデザインを手がけた友だちから紹介文を書くよう仰せつかる。以下が今朝一発OKの出た紹介文。

《 木版画と同様に銅板に彫刻刀で直接彫る方法で銅版画を創る林由紀子さんの蔵書票は、日本のみならず、ヨーロッパ、中国でも人気があります。ポルトガルから出ている蔵書票の世界年鑑では、日本人作家では四人目に紹介されています。
 葉書よりも小さな画面に満ちる幻惑の桃源郷、手にする人は壺中の天地の遊楽にふっと誘われます。 》

 来年二月一日から二十八日まで、東京・茗荷谷のギャラリー”Galleria Caffe U_U”で開催。
http://cafe.u-u.cc/

 きょうは中井英夫の命日「黒鳥忌」。氏からの手紙、葉書はまだ箱にしまったまま未整理。1993年9月17日の誕生日に入院先へお見舞いに行き、持参した『人外境通信』講談社文庫にサインをしてもらった。まさしく遺品だ。そういえば昨日林由紀子さんのアトリエに個展の葉書を届けたとき、一緒に行ったデザイナーが作業用のスタンド付きレンズの使いかってを訊いた。その品は画家山本六三(むつみ)の遺品だ。

 明け方から昼近くまで雨。それから急に晴れてくる。出かける気力が湧く。風が強いので、風当たりの弱い道がつづくブックオフ三島徳倉店へ自転車で行く。大仏次郎天皇の世紀朝日文庫全17冊(1977-1978年初版)が並んでいる。後半の8から17まで10冊、計1050円。これは単行本で6冊持っている。後が続かなかった。文庫の8だけ重なっていた。やれやれ。これでいつかじっくり読める。いつか。

 昨日の『甦る推理雑誌4「妖奇」傑作選』光文社文庫の前説、山前譲「独自の妖しい世界を貫いた『妖奇』」には以下のように書かれている。

《 じつは、初期の「妖奇」に掲載された作品はほとんどアンコールなのだ。(引用者:略)海外の雑誌には先例があるが、なかなかのアイデアであった。 》

 総目次には城昌幸「怪奇の創造」、岡本綺堂「蜘蛛の夢」、渡辺啓助「血笑婦」、小栗虫太郎「後光殺人事件」、大阪圭吉「燈台鬼」、夢野久作「悪魔祈祷書」などなど、今でも読まれる小説が再録されている。また、香山風太郎「悪魔の貞操帯」といった、当時の新進作家、香山滋山田風太郎をもじった作家名もあって笑える。東郷青児の小説「羽根のない天使」なんかはちょっと読んでみたい。

 1950年の第4巻第4号に徳川夢声の短篇「オベタイ・ブルブル事件」。これは1927年の『新青年』に発表された。『昭和のエンタテインメント50篇・上』文春文庫1989年初版で再読。題名の由来を忘れていたけど、ああ、そうか。「オベタイ」とは「冷たい」がなまった。「ブルブル」は寒いの意味。この文春文庫には他に佐藤春夫「家常茶飯」、サトウハチロー「エンコの六」などなかなか読めない小説が収録されている。

 奈良の古本屋智林堂のブログに《 「筑摩世界文学大系」(1958年〜)全102冊をどう売りさばいたものか頭を悩ませていたが、 》という話。

《 ところで、筑摩はこの大系の完結後に同じシリーズ名で新版を刊行している。当方が把握している限りでは1971年〜全91冊。判型も同じで装丁も類似しており、混乱を誘う。せめてタイトルには「新」の文字を冠してほしかった。 》

 新版の最終回配本が第90回配本の68巻『ジョイス II オブライエン』1998年刊行、本体価格6300円。カバーには「全巻完結!」のゴチック文字が躍る。ネットで話題になった。先だってそのオブライエン「第三の警官」「スウィム・トゥー・バーズにて」を読んだ。

《 旧版と内容的にも重なる部分が多いが、巻立てなどは異なり、新版で新たに収録された作品も少なくない。第1巻の「古代オリエント集」はききめの巻で古書価はかなり高い。 》

 これも新刊で購入している。1980年5刷、定価3200円。当時読む気はなかったけれど、後日の購入困難を予想して。

 ネットの見聞。

《 カントは『人倫の形而上学の基礎づけ』で、人は幸福を望んでいるのに何が幸福なのかを知らない、だから「幸福になれるように行為せよ」という命令は不可能なんだと言っている(第2章)。含蓄のあるお言葉ですなあ。 》 森岡正博

 和歌山県のJK18歳倉田枝利稼歌う中森明菜「少女A」、これいいわ。ギャップに笑うしかない。
http://www.youtube.com/watch?v=AdGkfCooN6w