『真珠母の匣』

 中井英夫 『真珠母の匣』平凡社1978年初版を久しぶりに再読。本が出た当時読んで、よく分からないまま、本を閉じた。初老のオバサンたちの繰言(!)は、三十路にもならぬ若輩者には到底理解の及ぶところではなかった。しかし、主役の三姉妹よりも年長となった今再読すると、その心の襞の奥底までもくっきりと痛いほどに見えてくる。じつにみごとな短篇連作小説だ。艶のある真紅の布装に金文字が、逆に痛ましき輝きを想起させ、深い印象を心に刻む。

《 名前も知らず顔もさだかではないままの人間でも、他人の一生に重い影を落とすことはあり得るのだ。 》 「優しい嘘」

《 つまり脆さとか傷つき易さっていうのは、決して欠点とばかりはいえない。傷つくからこそ美しいものもあるんだっていうけど、ぼくはお前なんかやっぱりミスター・パールだって皮肉をいわれたのかと思った。 》 「優しい嘘」

 「脆さ」以下の文に国土強靭化をぬかすオバカ者を思った。国土強靭化、まず国土狂人化と変換された。パソコンは正直だ。

 お買いものついでにブックオフ長泉店に寄る。京極夏彦『死ねばいいのに』講談社2010年初版帯付、橋本治『ぬえの名前』岩波書店1993年初版帯付、J・B・ラッセル『悪魔の系譜』青土社1991年4刷帯付、計315円。

 ネットの見聞。

《 長谷川眞理子日経新聞で、自分がやっているのは哲学ではなく科学であり、自己意識は脳の働きの氷山の一角でしかなく「自由意志などというものも、本当は存在しないことがわかっている」と述べている。長谷川が分かってないのはその言明自体がひとつの形而上学の上に立っているということだ。 》 森岡正博

《 核燃料サイクル、群分離・消滅処理政策など、80年代末には無理という事が世界の原子力先進国の認識だったのだが、日本は80年代末から何度も撤退の好機があったのに、”責任を取りたくない”という理由で今に至る。完全に無駄のうえに福島核災害。 》 BB-45

《 森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ)で、『スヌーピー展』が開催中なので、行きたいなあ、と思っているのですが、入場料が2000円。そうかあ…。 》

《 10日、低気圧が関東地方を通過した後、東京の上空には乳房雲が出現しました。東京周辺は大気の状態が不安定になり、あらわれたものと思われます。 》

 見たい触れたい乳房雲(雲だぞ、雲)。