「名探偵なんか怖くない」

 氷雨の一日。家にこもって西村京太郎『名探偵なんか怖くない』講談社1971年初版を読んだ。海外からエラリー・クイーンエルキュール・ポアロそしてメグレが東京へ招聘される。もう一人明智小五郎も招かれる。新宿のマンションで一堂に会する四人の名探偵。招待主からの四人への依頼は、先年起きた三億円強奪事件の犯人を見つけ出してほしいというもの。そのため、事件発生と同じ十二月十日に同様の三億円強奪事件を発生させて、その犯人の行動を推理してもらう。若い失業者をうまくそそのかして事件は起きた。彼のその後の行動は? 名探偵たちの手腕はいかに。

《 三島は一寸背伸びして、空港税関を出てくる乗客の中に、エラリー・クイーンの姿を探した。 》

 冒頭一行がこれだから、読まずにはいられない。メグレと明智小五郎の会話。

《 「あの男は何処の国へでも顔を出しています。それも、ナポレオン皇帝気取りだから困ったものです。私は、一九三一年に警察へ入ったので、ルパンと戦わずにすみましたが、あの男は、日本で何をしたんですか?」
  「国宝の美術品を狙いましたよ。だが、今になって考えてみると、彼が懐かしくて仕方がありませんね。黄金の仮面をかぶって、われわれの前に現れたのですが、あの颯爽とした姿は、忘れられません。日本人の間にも、不思議な人気がありましてね。大島不二子という素晴らしい美人が、ルパンの恋の虜になってしまったくらいです」
 「だから困るのですよ」
  メグレは苦笑した。 》

 そして起こる密室殺人事件。

《 「皆さんは、全員で、私に嘘をついていたんですか?」
   吉牟田刑事が、呆然とした顔になると、         》

 四人の名探偵の特徴が見事に活写されている。そして「読者への挑戦」。四人それぞれの発言(と言い訳)も楽しい。そうして真相の解明。これは面白い。推理小説への深い薀蓄と愛がなければ書けなかったミステリだ。ただ、ネタバラシがあるので、彼らの代表的な作品を読んでいない読者にはオススメできない。久しぶりの西村京太郎の初期作品。堪能。

 ネットのうなずき。

《 小説の魅力の第一は文章の巧みさだ。下手な文章ではせっかく、描くもの、人物、思想などが素晴らしくてもまったく感激しないし、何気ないことも文章が素晴らしければ私たちの心に直接、響いてくる。 》 武田邦彦

 ネットの見聞。

《 出来事の意味というのは、それが起きたあとに、「どういう文脈に位置づけるか」「自分の作った物語にどれだけ多くの人をまきこめるか」という「後知恵」で半分以上決まります。それが政治力というもののかなりの部分を占めるようです。 》 内田樹

《 現代哲学は、言語、社会・権力・システムなどをテーマに進展してきたが、いまひそかに来ている波は生命なんじゃないのか? 私がここのところずっと言ってる「生命の哲学」は、実はど真ん中なんじゃないかという気がするが。 》 森岡正博

《 核のゴミ、最終処分場は首相の出身地にお願いします。 》

《 日本史ファンは3種=1種・邪馬台国のあたりにこだわる古代史ファン、2種・戦国ファン、3種・幕末ファン 》

 ネットの拾いもの。

《 「1! 2! 3! 都知事ダァーッ!」 猪木都知事。 》