中井英夫/やなせ・たかし

 昨日市立小樽文学館で催されている「中井英夫展」の図録が届く。じっくりと読んでしまう。三十六頁。薄いが厚く熱い。というより冷熱。病臥の歌人中城ふみ子との往復書簡。

《 この往復書簡は『中井英夫全集第十巻 黒衣の短歌史』(ニ○○ニ年、創元ライブラリ)に完全収録され、大きな反響を呼んだ。》

 本棚から取り出し読んた。参ったなあ。菱川善夫は解説で書いている。

《 事実、中井英夫の「魔法」も無駄に終わった。しかし無駄と知りながら、その無駄に賭ける情熱を信ずることなくして、どうして文学の言葉が成りたつだろうか。一切の地上的制約を越えて、「小さな花嫁さんに」と呼びかけたところに、私は中井英夫の徹底した反地上的な魂の結晶を見る。人間は非力なものだ。しかしその非力さを骨身に沁みて知った者だけが、非力という恥辱の中から、珠玉の言葉をつかみとってくるのである。中井英夫の最後の手紙は、それを語っているだろう。 》

 菱川善夫の解説は『黒衣の短歌史』『暗い海辺のイカルスたち』へ移ってゆく。

《 大切なのは、その美の系譜の発見であって、同時代の人間と安直に手をたずさえることではない。 》
《 この暗黒から発する光、それを盛る器が現代の短歌形式だという認識の中にも、中井英夫の美学は脈々と生きている。 》

 この評言から、北一明氏の輝変茶碗へと連想が飛翔してゆく。北氏から輝変茶碗を買い求めた時、中井氏はすでに入院の身だった。

 昨日香美市立やなせたか記念館から冊子「NEWS」61号と20冊の寄贈本の承諾書などが届く。展覧会は盛況で好評だった。よかった。中井英夫とやなせ・たかしに共通するものは、前例の無いこと、前人未踏のことを逆風の中でしたということ。当初は無視黙殺された。しかし、時代は変わる。時代の風は追い風になった。お二人の人生を思うと、自分はどう生きるべきか、とちょっと考え、そして少し奮い立つ。しかし、残された時間はそんなにないよなあ。

 ブックオフ長泉店で二冊。山岡荘八『海底戦記』中公文庫2000年初版、楊逸・選『女がそれを食べるとき』幻冬舎文庫2013年初版帯付、計210円。

 ネットの見聞。

《 ヤフオク落札 SF奇書の代表株『醗酵人間』、カバーと帯だけ(本体なし)で9万7千円!!!  》
 http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g134134431

 栗田信『発酵人間』は来年、戎光祥出版から出る予定。
 http://ebisukosyo.co.jp/index.html

《 今日はカサゴを買った。オコゼやカサゴはわたしの好物である。ただし、ミシマオコゼはリズム感に欠ける。三島女郎衆が醜悪でみだらなところからつけられた名であろう。オコゼとは名ばかり、身に張りも華もなく、コリコリ感はほとんどない。関東の魚屋でよく見かけるが、元来産額も低く、練製品の原料くらいの用途しかなかった。 》

 言いがかりか本当か。

 ネットの拾いもの。

《 『クリスマスのフロスト』創元推理文庫。これぞ「進撃のオヤジ」! 大人気フロスト警部の初登場作 》

 このシリーズは面白い。といってもまだ全シリーズ読みきっていないけど。

《 セルフ洗車機の中でエンスト起こした人がいて大渋滞。 》

 最後のお知らせ。明日だ。

 NHKテレビ総合、26日(木)午後3時15分からの『金とく 富士山』で始めの十分間、私が源兵衛川を案内。
 http://www.nhk.or.jp/nagoya/kintoku/encore/20131226/index.html

 奈良在住の作家寮美千子さんから「拝見します!」のメール。うれしい。
 http://ryomichico.net/