「爆発の臨界」

 曇天の寒空。部屋にこもっていたけど、動きたくなってブックオフ長泉店へ自転車で行く。数冊抜くが、棚に返す。気が乗らない。向かいの新刊書店で岩本素白『素湯のような話』ちくま文庫2014年初版帯付を購入。945円。今年初の新刊買いもの。

 田中光ニ『爆発の臨界』祥伝社ノン・ノベル1974年初版を読んだ。巨大タンカーが伊豆半島沖でゲリラに乗っ取られ、爆薬を仕掛けられたタンカーは東京湾奥深くに停船。ゲリラは鹿児島県にある石油基地の爆発を要求。拒否ならばタンカーを爆発させる。タイムリミットは刻々と迫る。政府の決断は? ぐっと惹き込まれるリアル・サスペンス小説だ。タンカーとは無関係に思われる人物たちの動向も、どう関わってくるのか眼が離せない。これは面白い。堪能。不死身のヒーローは出てこないが、映画『ダイ・ハード』などの先達だ。

 去年暮れに読んだ西村京太郎『消えたタンカー』カッパノベルス1975年初刊に先立つタンカー小説、田中光ニ『爆発の臨界』が気になっていたが、幸運にも一昨日見つかった。求めよ、されば与えられむ、だ。

《 「それがこの問題の本質だ。ぼくらは余りにも情報社会という奴に狎らされて来た。情報の量が厖大になり、それを伝達する手段が巨大になればなるほど、それが真実かどうか見抜くのは難しくなる。そして真実であろうとなかろうと、一度認知された情報はそれ自体の価値を生み出すようになるんだ。/ いわばぼくらは、情報への感受性を失ってしまったと言っていい。一方的に与えられることに狎れ、鵜呑みにすることにむしろ快感を覚え始めている。」 》 181頁

 今では個人の情報収集発信手段が携帯電話やパソコンなど多種あるから、ここで政府がとった情報隔絶手段は不可能だけれども、上記の会話は、四十年前と現在とがそのまま接続している、と思わせる。

 ネットのうなずき。

《 自分だけのためでなく誰か他のひとのために生きることの楽しみがわかったら、大人だと思う。 》 大田忠司

 ネットの拾いもの。

《 ルンバの上に埃がたまっている。 》