「工藤直子詩集」

 障子越しの光のなかで工藤直子工藤直子詩集』ハルキ文庫2007年5刷を読んだ、一つひとつの言葉が無理なく自然に胸に入り心にすっと届く。詩では珍しい体験だ。

《  ものたちはおそらく太古から
   あたりきのように鮮やかなのであって
   わたしは ひょっとして今まで
   目を閉じつづけていたのではなかろうか
   と思わせる朝である               》 「みえる」より

 そうそう、とうなずいている自分。工藤さんから恵まれた『のはらうた II 』童話屋1985年初版に挟まれた和紙に「越沼さんにかぶとてつおのうた ささげます」と書かれた詩も収録されている。

《  つよく
   おおしく
   いきる!
   それがぼくのけっしんです

   でも ときどき
   むねの やわらかいところが
   なきたくなるのね
     ・・・・・・
   なんでかなあ            》 「けっしん  かぶとてつお」

 三行詩「ほんとう」。

《  愛する という言葉を知ったら
   「ほんとうのことを言おうか」という
   言葉のこわさも知りました         》

 しみじみ痛感する二行詩「夜なか」。

《  寝返りうたなきゃ さびしくて
   寝返りうつと なおさびしくて    》

 いい詩がいっぱい。気持ちがきれいになった気分。突き抜けた詩群。障子を開け、晴天の空を仰ぐ。これだなあ。

 ネットの見聞。

《 『小説すばる』2月号の特集「はじめての東京暮らし」で「今住むなら、この古書店街だ!」という記事で「谷根千」「おに吉」「わめぞ」を紹介しました。 》 荻原魚雷「文壇高円寺」

 「谷根千」は谷中、根津、千駄木。「おに吉」は荻窪西荻窪、吉祥寺。「わめぞ」は早稲田、目白、雑司が谷。甲乙つけ難し。

《 電子書籍のいいところは指を切る心配がないことだ。 ← 身銭を切る必要はあります。 》