「『奇譚クラブ』の人々」

 昨日買った北原童夢・早乙女宏美『「奇譚クラブ」の人々』河出文庫2003年2刷を読んだ。

《 団鬼六花と蛇』、沼正三家畜人ヤプー』を生み、三島由紀夫澁澤龍彦川端康成江戸川乱歩寺山修司ら注目した雑誌。 》 裏表紙の紹介文

《 敗戦の翌翌年一九四七年(昭和二十二年)に創刊された「奇譚クラブ」が、紆余曲折を経て、そのような雑誌として確立するのは、五十二年になってからである。 》 「はじめに」

《 「奇譚クラブ」は”アブノーマルの教科書・参考書”として二十年以上も熱い支持を集め、一九七五年(昭和五十年)に幕を閉じたが、私は、残念ながらリアルタイムでは見ていない。 》 「はじめに」

 同じく。そこに集った編集人、作家、画家、モデルたちの歴史が丁寧に綴られている。

《 未知のものに名前をつける作業、あるいはどろどろした欲望に満ちた混沌を言語化していく作業。簡単に言うと、レッテルを貼る作業。それはきっとつらい過程に違いない。だからこそ、読者に感銘を与える。 》 「あとがき」

 昨日の「すい・つう・いき」の江戸の廓を連想。一六七八年に刊行された『色道大鏡』全十八巻。

《 『色道大鏡』の著者藤本箕山は、以上のような大勢の中で、たった一人この道を「色道」と名づけ、その理念を徹底して追究樹立しようと図った痴れ者である。 》

《 このころ芸事の多くが芸道として確立されようとする、ちょうどその時期に当っていたことは事実だが、それにしても「色道」の確立を図るというのはかなり異様な発想であり、箕山の個人的資質に左右されるところがはなはだ大きいことは疑いない。 》

 どちらも性がらみの事例だけれど、前例のないことを開発開拓してゆくことの困難と興奮が入り混じった、後で振り返れば、羨ましいほどの人生の充実を感じる。北一明氏の焼きものの追究に金銭面から応援した一九九○年代。今思えばえらく苦労したけど、面白かった。そして一九七○年前後の新宿東口に集った人々……。その時代の特定の場所でしかできない格別に面白い事象がある。遊郭も「奇譚クラブ」も北一明も新宿東口も、そんな異様に盛り上がる熱気の時があった。

 ネットではニ○○○年ころの数年、ミステリ・サイトが大いにに盛り上がった。「猟奇の鉄人」「小林文庫」「ガラクタ風雲」「幻想文学館」「BAR黒白」「UNCHARTED SPACE」「銀河通信」「カフェ白梅軒」「なまもの!」「未読王購書日記」などなど百花繚乱、飛ぶ鳥もつい留まる賑わいだった。サイトの更新が待ち遠しい、やたら面白い毎日だった。ウェブサイトからいくつかの単行本が生まれたが、『未読王購書日記』本の雑誌社2003年初版が嚆矢だろう。愉快極まりない。帯にはゴシック体で大きく。

《 とにかく俺は読まないの! 》

《 今、書店でこの本を手に取っていらっしゃる貴方、もしも本書を買われた後になって貴方と揉め事になったり裁判沙汰になったりするのは嫌なので、一言、この本を購入されるにあたっての注意事項を述べさせて戴きます。後になってから「そんな話、まったく聞いてなかった」などとは絶対に仰らないように。何があろうとも返金することはありませんので。
 まず、本書は「読書録」や「書評集」や「ガイドブック」ではありません。もしも今、この『未読王購書日記』なる本を買って、面白そうな本を選ぶための参考にしようなどと考えている方がいるとすれば、それは大きな間違いです。何せ、この本の中に書名の出てくる本のおよそ98%は、全く読んでおりませんので、その本が面白いかどうかなんてことは私にはさっぱり分かるはずもありません。 》 「ご注意(一)」より
 http://homepage2.nifty.com/bambixx/furuhon/cm.html

 先月出版された小山力也『古本屋ツアー・イン・ジャパン 』原書房の先輩だ。
 http://blogs.dion.ne.jp/tokusan/

 西風なので南下、ブックオフ函南店へ自転車で行く。塩野七生『わが友マキアヴェッリ  フィレンツェ存亡』中央公論社1987年2刷帯付、井波律子『読切り 三国志ちくま文庫1994年3刷、松木寛蔦屋重三郎  江戸芸術の演出者』講談社学術文庫2002年初版、計315円。

 ネットの見聞

《 こうして個人が、きわめて私的なエディションを、素敵なセンスで送り出すことが、もっと流行するといい。雑誌が売れない、なんていうのはマスの世界。過不足なく、少人数に届けば、そこに世界が生まれる。個人の時代が来たのだろうか。そうならば、未来に期待が持てる。 》 岡崎武志
 http://d.hatena.ne.jp/okatake/

《 BL( Boys Love )からTL( Teens Love )へ 》

 Time Line じゃない……。

《 戦争経験者が作る戦争映画と経験のない人が作る戦争映画の最大の違いは「敵がどこにいるのかわからない、敵が誰だかわからない、どこに逃げればいいかわからない」という失見当識状態の恐怖に未経験者はあまり興味を示さないということのようです。 》 内田樹

《 なぜダイオウイカが次々に水揚げさるのかというニュースで、各専門家が海流の変化や地震の前兆などの説を唱える中、さかなクンの「ブームだから(実はこれまでもよく水揚げされていたが食べられないので漁師が捨てていただけ)」という説が一番説得力があった。 》

 ネットの拾いもの。

《 なぜか今日は忙しそうな予感が。これはよく外れるが。 》