「大穴」

 昨日団鬼六の名を挙げたので出世作『大穴』角川春樹事務所2000年初版を読んだ。主人公は大阪北浜の穀物取引市場で穀物相場の大穴を狙う、二年留年している大学生の男。小豆相場でスッテンテンになり、そして二転三転あれよあれよのジェットコースター的展開。登場人物皆キャラが立ち(悪く言えば類型的)、じつに映画的。これは惹き込まれる。やたら面白いわ。映画化され、テレビ番組になったのもむべなるかな。

《 この『大穴』という小説は昭和三十二年の九月に五月書房に依頼されて書いたもので、執筆した当時の私は二十六歳になったばかり、まだ小説の書き方もろくに知らなかった若造であった。私の団鬼六というペンネームなど誕生しておらず、この時は本名を使っていた。 》 『大穴』復刊に際して

《 しかも、長編、書き下ろし、執筆期間は四日間という無茶苦茶な条件を突きつけてきた。(引用者:略)それでホテルへ監視つきで缶詰にされ、ほとんど三日間、不眠不休で自棄になって書き下ろしたのがこの『大穴』である。勿論、長編など書いたのはこれが初めてで途中で頭が朦朧となって、自分で何を書いているのかわからなくなってしまった。 》 同

 ネットの見聞。

《 志賀直哉全集が売れた。なんというか、もう、どうしたらいいのかわからなかったので嬉しい…。 》 古書現世

 ほんと売れない時代だから。昨日挙げた「猟奇の鉄人」。2004年に本の雑誌社から kashiba @猟奇の鉄人『あなたは古本がやめられる』が出版された。ブログを活字化した「古本血風録日記」の1999年9月11日の記事から買った古本の値段。

  『大江戸歳時記 捕物帳傑作選 秋の巻』河出文庫800円
  『大江戸歳時記 捕物帳傑作選 新年の巻』河出文庫1000円
《 河出文庫のアンソロジー・シリーズは、あと5冊。昔は、どこにでも並んでいたんだけどねえ。定価以上で買う時代が来ようとは。 》

 『大江戸歳時記 捕物帳傑作選 新年の巻』河出文庫は定価620円。歳時記シリーズ全五巻はブックオフで一冊105円で揃えた。時代は変わる。

《 イルカ漁を忌避するのはもちろん個人の自由だけど、イルカを食べるのもまた個人の自由である。/ 道徳や倫理と法は違うのだということが分からないと、民主主義は多数派の情緒を少数派に押し付ける暴力装置になってしまう。 》 池田清彦

《 NHK天皇陛下の「お言葉」を恣意的に一部カットして報道〜蜜月・安倍政権への“配慮” 》
《  削除された天皇の「お言葉」の該当部分は以下のようなくだりだ。
  「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」 》
 http://biz-journal.jp/2014/01/post_3936.html

 ネットの拾いもの。

《 360円の時代もあったし、70円台もあった。
  どっちでも生きてきているのが日本の強さ。 》