「奇妙な本棚」

 味戸ケイコさんから季刊『詩とファンタジー』最新号「やなせたかし追悼号」かまくら春秋社を恵まれる。宇野亜喜良が描いた表紙のやなせたかしに敬礼する少女が何ともいい。味戸さんの個展が五月に東京青山の画廊で催される。その画廊では二十年ぶりかな。

 昨日買った伴田良輔『奇妙な本棚』筑摩文庫2002年初版をパラパラと読む。エロティックなものや奇妙な写真集がずらり。目に留まった図版の紹介から読み始めるのが正しい鑑賞法か。

《 写真はそれほど自由なのだ。 》 「オフビートの視点」

《 この小さな写真集に収められた動物は全米六カ所の動物園で生まれた子供たちなのである。すべてニックネームも大きく記されており、種の代表としてここに登場しているのではなく、「個人」として登場していることがわかる。  》 「最後の赤ん坊」

《 マイケル・オニールは可愛い赤ちゃん写真を撮ろうとしたのではないのだ。(引用者:略)動物の子供を見ると無条件に可愛いという言葉を用意してしまう人間の甘さを刃物で逆撫でするような感じが、この写真集にはすり込まれている。 》 同上

《 ニューヨーク近代美術館での展覧会カタログとして作られた。アートとして作られたものでないところから出現するアートが、今後もますます多く名乗りをあげるにちがいない。それを探し出してくるのもキュレーターの重要な仕事。 》 「遺伝子の未来形」

 深く同感。アーチストもキュレーターも、現代アート〜芸術という用語に頭も足も絡め取られている気がする。まあ、私は超芸術トマソン=路上無用物物件が好きだからかもしれんけど。

《 本について書くよりも、本を探している時間のほうが楽しいことはたしかである。どんなに言葉をついやしても、その本自体の素晴らしさには追いつかない。本について書くのは、そういう意味でしんどい作業である。けれど、こんなに面白い本がここにあると伝えたい欲求もある。 》 「あとがき」

 本を探している時間のほうが楽しくて、用事が済んだ足でブックオフ長泉店へ行く。文庫を四冊。角田喜久雄『黒岳の魔人』中公文庫1983年初版、藤枝静雄『田紳有楽│空気頭』講談社文芸文庫2012年22刷、アイリアノス『ギリシア奇談集』岩波文庫1989年初版、『ベーオウルフ 中世イギリス英雄叙事詩岩波文庫1990年初版、計420円。部屋に積んである文庫本をちょっと整理しようと試みた……この本を買ってあったとは、記憶になかった、嬉しい!……雪崩れ……諦めた。

 ネットの見聞。

《 何の制約も受けずに選挙応援したければ、NHKの経営委員を受託すべきではない。経営委員やりたいけど、制約も受けたくないというのは、ただのわがままでせう 》 Shoko Egawa

《 最近流行りの<個人的意見>だけどね、これが罷り通るようになったら怖いですよ。英語の教員が「学校で英語を習っても意味ない。あ、個人的意見ね」なんてのを想定してみたらいい。つまり、自分の職掌に責任を持つ必要はない、という話になっちゃいますよ。まさにNHKの人はそうだよね。 》 松井計

《 日本人が欧米から見て他のアジア人とは別格だと思われてるとか戦前の華麗なる勘違いを引き継いでいる人が実際おるんかと驚いたわ。悪いけど全部一緒くたやで。日中韓区別してる人なんか一般ではほとんどおれへんで。 》

《 ものを習うときに「その意味や有用性について自分はすでに知っている」というところから始めちゃダメですよ。 》 内田樹

 ネットの拾いもの。

《 森喜朗元総理がTwitterのアカウントを取ったら、毎日、お祭り騒ぎで楽しくなるだろうな。(笑) 》

《 そして今回5回目の候補で直木賞を受賞した姫野カオルコさんは「長い間、好みではない私の本を読まされていた選考委員の皆様、これでもう読む必要はなくなりました。ご安心ください」と語り、会場を沸かせていました。 》

《 恐ろしい夢をみた。別れた妻がまた家に戻ってくるという夢だ。 》