「終末への予感」

 サンソン・フランソワマリア・ジョアン・ピリスの「ショパン 夜想曲集」を聴き較べた。フランソワは1966年の録音。ピリスは1995、1996年の録音。
 フランソワの粋で逸脱しそうな振り幅の華麗な展開にたいして、ピリスは夜の静寂の深みへ眼差しを沈め、深奥から映える星の煌き。見事なまでの個性の違いが面白い。どちらがいいとはいえない。あとは好みだろう。

 多木浩二中村雄二郎『終末への予感  欲望・歴史・記号』平凡社1988年初版を熟読中。四半世紀も前の対談集だけれども、ここで俎上に上げられた課題の多くが今も課題のまま。じつにスリリング。

《 中村──そうです。スピノザのほうが「もの」のもっている「もの性」みたいなものへのこだわりが強いんです。デカルトのほうは、「もの」からどうやって自由になるかという意図がすごく強いから、どうしても「もの」離れするところがある。 》 21頁

《 中村──日本の浮世絵の春画が独特だと思ったのは、ほかの国のものがその国の芸術と切れているのに、日本のものは芸術とつながっているんですね。 》 69頁

《 多木──たとえば線ひとつのうごきが、一点に中心化しているか、していないか、といったようなことから、視線の差異を明らかにしていきますが、そのとき空間を対象化していくのと、空間を生成していくのとでは、違いますね。たとえば遠近法は空間を対象化します。ほかの感覚からの分離もはっきりしますし、カオスは完全に排除されますね。 》 76頁

《 中村──そうすると、写真の視覚における根本的な革新というか革命というのは、遠近法をとおして遠近法を壊しているわけですね。
  多木──そうです。二十世紀のキュビズム以降の絵画は、画面のなかの遠近法の成立そのものを壊すことなんですね。
  中村──壊しているんですね。
  多木──だけど写真は、画面のなかの遠近法は壊していません。 》80頁

 ネットの見聞。

《 3月10日は一度に10万人の市民が虐殺された人類史上最悪の東京大空襲  》

《 1945年3月10日午前0時7分 279機のB29による夜間低高度無差別爆撃開始 第一目標 東京 深川 》

 ネットの拾いもの。

《 「どうせうまくいく」 》