「造形と総合美」

 穏やかな晴天。富士山は純白。こんな日に限って午後に用事があり、時間を気にせずには過ごせない。昨日の午後は思いっきり古本を眺めていた。はしごしたかったけど、強風のため断念、残念。さて、用事を済ませてブックオフ長泉店へ寄る。泡坂妻夫『黒き舞楽白水社1990年初版、多田富雄『イタリアの旅から』新潮文庫2012年初版帯付、半藤一利『昭和史探索1』ちくま文庫2006年初版帯付、計315円。

 北一明『造形と総合美』山海堂1985年初版を再読。昨日の『炎の造形』と同時(1985年4月8日)に刊行された。『炎の造形』を本編とすれば、『造形と総合美』は展開編にあたる。「新しいヒューマニズムへの道」というテーマでデスマスク等のオブジェを中心に語る。

《 そもそも芸術的表現は、何より先ず美しくなければならないというのが、かねてからの私の持論でもあった。しかし、時に、美しさを超えて、その悲劇性、悲惨さ、愚挙を告発し、人間の心の内心にひそむ悪の本質を仮面という鏡に投影することによって、病根を剔出し、その行為を断念させしめるような有効性のある、リアリズムをも超えるリアリティな表現でなければ、真に大衆に奉仕し、平和に寄与することが出来ないのではないか、そうでなければ、今後、真の意味での芸術とはいえないのではなかろうかと私はこの頃確信するに至った。》 47頁

 手元には「あの刻(とき)の告発」1977年と「怨の瞳」1984年の二体のデスマスクと陶板「人類棲息の証」1986年がある。作品をどうとらえるか、じつは今も考えている。

 ネットの見聞。

《 また、塚本の推理小説好きは夙に聞こえたところだが、SFもSFマガジンを創刊から読むようなファンだったようで、書簡中にはF.ブラウンやR.シェクリイ、意外な所ではC.スミス「シェイヨルという名の星」を褒める記述があり、ブラッドベリ華氏451°』では「涙が出る位感動」と異例の絶讃。 》 クインクティウス・フラミニヌス

 本棚から『ブラック・ユーモア選集 第6巻 外国篇(短篇集)』早川書房1970年初版の「月報4」を取り出す。

《 笑ってからぎょっとするのにも阨き、作者の底意と自らの悪意に気づいて、万感胸に迫りながら快心の笑みをもらす、そのような作品こそブラック・ユーモアの真髄とするなら、私の机上にはブラッドベリの『火星年代記』と澁澤龍彦『異端の肖像』がこの数年おかれっ放して、書棚に収める暇が無い。 》 塚本邦雄

 当時これを読んで古本屋へ走り、澁澤龍彦『異端の肖像』桃源社1967年初版を購入。これが最初の澁澤龍彦だったか。

《 薬局の陳列棚はどうしてあんなに魅力的なんだろう。書店も文具店もそうだけど、薬局の棚も、眺めていると時間がどんどん過ぎてしまう。飲みもしない薬の効能とか、それを説明している図とかに、気がつけばじっと見入っていたり。店を出たら、自分が何を見たのか全く憶えていないのも不思議。 》 道尾秀介

《 パラケルスス自身が実際に使用した医薬、すなわち秘薬と呼ばれる第一物質・賢者の石・生命の水銀・チンキ剤、そして様々な種類の第五精髄(クインタエッセンティア)・霊薬(エリクシール)・変成物(マグナリウム)・特効薬などの作り方が説かれている歴史的な書=『アルキドクセン』の邦訳が完成! 》 編集者 伊勢田陽一

 種村季弘パラケルススの世界』青土社1977年初版を再読したくなった。その帯文。

《 宇宙を生命をもつ一つの有機体としてとらえ、デカルトやカントの思想的源泉となり、ゲーテシェイクスピアの精神的土壌ともなって人文主義に道を拓き、また近代医学の父とも仰がれる、放浪と奇行の錬金術パラケルススの栄光と悲惨の生涯。 》

 「あとがき」から。

《 近代医学が逆立ちしてもそれ以前の時代の医学に敵わない点が確実に一つだけある。自然科学と精神科学との間の緊密な関連である。 》

《 世界中の原子力発電所から日々、使用済み核燃料が大量に生み出されている。その量は処分やリサイクルが可能な量を超えている。最終処分や管理の方法を考えないまま、各国が原発の建設、稼働を進めてきたからだ。(アリソン・マクファーレン/米原子力規制委員会委員長) 》