雑誌の棚から『BRUTUS』1997年11/1号を抜く。特集の一つが「こんなミステリーは選ばない!?」。「NYミステリー界御意見番」オットー・ペンズラーはアメリカ探偵作家クラブのエドガー賞の選考について語る。
《 もちろん全員一致で最優秀賞が決まるなどということはない。それは不可能な話だ。彼らは候補作品を熟読したのち「これは私の愛読書とはなりえない、しかしこれこれの点で優れた本だ」というふうに意見を交わし合い、決定してゆく。賞の選考方法としては、これぞまさしく最善のやり方といえるのではなかろうか? 》
彼の選んだオールタイム・ベスト10を挙げておく。
《 1.ウィルキー・コリンズ『白衣の女』 2.アーサー・コナン・ドイル『パスカヴィル家の犬』 3.コーネル・ウールリッチ『喪服のランデブー』 4.アイラ・レヴィン『死の接吻』 5.ダシール・ハメット『マルタの鷹』 6.ロス・トーマス『大博奕』 7.ダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』 8.フレドリック・ブラウン『不思議な国の殺人』 9.トマス・ハリス『レッド・ドラゴン』 10.アガサ・クリスティー『アクロイド殺し』 》
未読既読未所持入り混じっている。『大博奕』は復刊待ち。読みそうにないのは、未所持の『死の接吻』と『レッド・ドラゴン』。
彼がこの10年のベスト1に挙げたトマス・H・クック『 Breakheart Hill 』が、文春文庫の『夏草の記憶』とは。こりゃワカラン。6位のドナルド・E・ウェストレイク『 Drowned Hopes 』は未訳のようだ。他の人が3位と10位に挙げているウェストレイク『 The Ax 』は文春文庫『斧』に。
他のミステリー専門家たちのオールタイム・ベスト10では、3位のロス・マグドナルド『ギャルトン事件』は未所持だなあと本棚の最上段、天井にくっつきそうな棚のロス・マクの本を眺めて、下段の本に目が留まった。箱入りの『日本探偵小説代表作集1 黒岩涙香集』小山書店昭和三十一年初版。すっかり忘れていた。江戸川乱歩・訳『死美人』を収録。これは黒岩涙香が(仏語からの英訳を)訳したボアゴベー『死美人』を、乱歩が現代語に訳したもの。
《 涙香の古めかしい味を充分残しながら、しかも今の年少読者にも読めるようにというのが、この現代語訳の方針であった。 》 「あとがき」
この本は、別の本棚に黒岩涙香『幽霊塔』旺文社文庫と一緒に収める。
味戸ケイコさんから電話。昨日記した「美少女の美術史」展へ絵を送った、とのこと。新作の個展は北青山にて五月十二日初日。なんとも微妙な日だ。
ネットのうなずき。
《 「ぼくは、とにかく人を説得することをやめて25年くらいになるな。人を説得することは、絶望だよ。人をほめることが、道が開ける唯一の土台だ。」小林秀雄 》
ネットの見聞。ギジェルモ・カブレラ・インファンテ(1929-2005)『TTT――トラのトリオのトラウマトロジー』現代企画室2014年2月 本体3,600円
《 1958年、革命前夜のハバナを舞台にした、キューバの鬼才、カブレラ・インファンテの翻訳不可能な怪作、遂に「超訳」なる! 【警告】真っ黒なページも、連続して登場する真っ白なページも、ひらがなを多用してたどたどしく書かれた手紙も、その中の誤字も、反転している文字も、すべてが作家が意図した「表現」です。印刷ミスだ、乱丁だ、誤植が多いと言って、返品なさらないでください。 》 帯文より
とりあえず本屋で手にしたくなる。
ネットの拾いもの。古書・あざぶ本舗。
《 この店の貼り紙がすごい。「募集」という文字が目に入ったので「バイトを募集しているのかな?」と思ったら「嫁さん募集」の貼り紙だった。「定員1名」と書いてある(笑) 》
《 BOOKOFFを見ればその町の文化度がわかる、と言っていた友人がいたけど、あながち間違いではないと思う……。 》