「蒼林堂古書店へようこそ」

 朝用事を済ませてその足でブックオフ沼津南店まで自転車で行く。道々名残の桜を楽しむ。山本周五郎山本周五郎・士道小説集』実業之日本社1972年初版、滝田務雄(みちお)『長弓戯画  うさ・かめ事件簿』東京創元社2010年初版帯付、計216円。

 乾(いぬい)くるみ『蒼林堂古書店へようこそ』徳間文庫2012年8刷を読んだ。蒼林堂古書店はミステリ古書専門。嬉しい設定だ。一話が二十数頁足らずの十四短編と、それに付随する二頁、十四篇のミステリ案内。
 古書店主の淹れたコーヒーを飲みながら、中学生から三十九歳までの数人の常連が「日常の謎」を語り合うという趣向。気軽にスイスイ読んで、ミステリ案内でその先の水先案内をしてもらう。初心者には嬉しい基礎知識。すれっからしは苦笑い……いや、これ読んでる知ってる、持っていると自慢かな。

《 しのぶがそう言ってバッグから取り出したのは、戸板康ニの『松風の記憶』(講談社文庫)だった。それを見たマスターが一瞬「おっ」というような顔をする。(引用者:略)
  「百円は当然行きますよ。いい本ですからね」
  「じゃあ百円でいいです」
   しのぶがその値段で納得したので、すみやかに買取が成立し、マスターは珈琲の準備にかかる。 》 90頁

 この1983年に出た文庫本は当然所持している。なぜなら、故小泉喜美子さんが解説を書いているから。ま、それだけの理由で買ったので読んでない。小泉さんの訳したアビゲイル・ヴァン・ビューレン『アビーおばさんのアメリカ式人生相談』TBSブリタニカ1982年初版は、キキメ(最入手困難)らしい。相談と回答の例。

《 「私の夫は牧師ですが、毎週日曜日の夜だけものすごいセックスをします。月曜日の朝、私はへとへとで、洗濯もできません。どうしたらいいでしょうか?」
  「洗濯は火曜日にしなさい。」 》

《 「”妻”と"愛人”のちがいは?」
  「”昼”と”夜”。 」 》

 中井英夫『虚無への供物』講談社文庫や小栗虫太郎黒死館殺人事件桃源社なども出てきてにっこりだが、とりわけ嬉しいのは、「ミステリ案内11」での服部まゆみ『時のアラベスク』角川文庫だ。生前一度、銀座のギャラリーでお目にかかっただけ。そういえば、小泉喜美子さんとも、銀座の某パーティ開場でお目にかかったのみ。一期一会。服部まゆみさんのご主人に紹介記事のことを、清原啓子の銅版画を印刷した葉書(目黒区立美術館製)でお知らせする。

 246頁に鈴木光司『リング』角川書店1991年初版が出てくるが、あ、これはブックオフで帯付105円で買った、と本棚の一番上を見上げる。天井に接している。

《 期限は1週間/あなたは生き残れるか。 》 帯文

 読んでないからわからない。帯の背には「小説の爆弾」。すごい惹句だ。連想したのが、古川日出男『沈黙/アビシニアン』角川文庫2003年初版の帯。

《 炸裂する言葉の弾丸/博覧強記の物語世界 》

 本屋、古本屋を主な舞台にしたミステリを最近よく目にする。凄い!と唸るような小説にはまだ出合っていない。印象深かったのは、紀田順一郎『古本収集十番勝負』創元推理文庫2000年初版か。大いに笑った。帯の背の惹句。

《 古本大争奪戦 》

 ネットの見聞。

《 田舎暮らしまではいかなくても、都心に一、二時間で出かけることができる場所に住む選択は、ありかなとおもっている。  》

 三島市はいいよ。東京まで電車、バス、ニ時間ほど。古本屋は全滅だけど。