新しい倫理

 毎日新聞昨夕刊、「パラダイムシフト ──2100年への思考実験  新しい倫理」、伊東俊太郎広井良典の対話が興味深い。 伊東の発言から。

《 2100年を見通して、新しい三つの観点が必要だと考えます。 》

《 第一はアヒンサー。ガンジーの言葉で「殺すなかれ」、「非暴力を意味します。 》

《 第二は「共生」です。他者を理解し、他者と共存することを21世紀の人類は学ばねばなりません。他者とは他人であり、多文化・ 他文明です。(略)もう一つ、自然も重要な他者です。 》

《 科学技術にも自然を壊すものと、自然を生かすものとの2種類がある。例えば原発は自然を暴力的に壊し、エネルギーを奪取し、 結果的に放射能によって子々孫々に禍根を残します。 》

《 第三は「格差是正」です。 》

《 50年までに何とか方向転換しなければならない。世界は成長社会から成熟社会、広井さんのいう定常社会へと移行せざるをえません。 注意すべきことは、定常社会が停滞社会ではないという点です。むしろ成長という抑圧から解放されて、人間性としては、内容的に いっそう豊かな時代が来ることに希望を持つべきです。 》

 ぐずぐずしていた雨空も昼前には止んで初夏の空。ブックオフ長泉店で五冊。島田荘司『改定愛蔵版 異邦の騎士』原書房1997年 初版、須賀敦子『塩一トンの読書』河出書房新社2003年初版帯付、中野翠『あやしい本棚』文藝春秋2001年初版帯付、有栖川有栖 『壁抜け男の謎』角川文庫2011年初版、重松宗育『星の王子さま、禅を語る』ちくま文庫2013年初版帯付、計一割引485円。

 読書関連の本がまとまって出されたよう。そこから二冊、『塩一トンの読書』『あやしい本棚』を抜く。『あやしい本棚』の表紙は 本の背表紙写真。山村修『禁煙の愉しみ』、村上春樹『約束された場所で』、小林信彦『おかしな男 渥美清』『和菓子屋の息子』、 『夢野久作全集』、吉本隆明共同幻想論』『自立の思想的拠点』『言語にとって美とはなにか 第2巻』、裏表紙には泡坂妻夫 『泡亭の一夜』、福田和也『作家の値うち』、『谷岡ヤスジ傑作選 天才の証明』など持っている本があって愉しい。
 どんな本を俎上にあげているかな、中野翠『あやしい本棚』をぱらぱらと読む。うんうんとうなずく箇所がいくつもある。ここは 一つだけを。

《 「自然に従う」心性は日本人の美点で、そこからすぐれた文化(文芸作品や芸術作品ばかりでなく、もっと身近なものまで)が 生まれて来たのだと思うが……もう駄目なのか。 》 320頁

 もう駄目なのか、とは思わない。なんとかする、しかない。他のページで書かれているが、教育だけがあって、教養のない人間が 多すぎる。

《 「日本人は教育はあるが、教養がない」という一節が、胸に突き刺さる。 》 290頁

 ネットの見聞。

《 光文社古典新訳文庫の今月刊、シャルル・バルバラ『赤い橋の殺人』(1855)はかなり気になる。訳者によると、探偵小説の側面 (ガボリオの先駆)があり、暗黒小説またはゴシック・ロマンスの性格があるという。 》 藤原編集室

《 しかも、このボードレールの友人でポーに傾倒したバルバラという作家は、フランスでも150年ものあいだ完全に忘れ去られ、 今回の訳者、亀谷乃里氏によって発掘、再評価されたという。 》 藤原編集室

 日本人作家でもありそう。陶芸の北一明は第一候補かな。

《 札幌市が7月19日〜9月28日に開催する札幌国際芸術祭のメイン展示「都市と自然」の前売り券の販売が1日に始まったが、 7日までの1週間で販売が8枚にとどまっていることが市への取材で分かった。 》
 http://news.livedoor.com/article/detail/8820704/

《 日本人はかつて「判官贔屓」というほど「弱い者の論理」をよく理解したが、現在ではそれは「長いものに巻かれろ」になった。 その典型が「独立国・日本の中にアメリカ軍がいるのも平気」が示している。 》 武田邦彦

 「判官贔屓」は本来「ほうがんびいき」と読む。