「村田エフェンディ滞土録」

《 梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』の紹介原稿を書いて送付。いや、梨木香歩、すごいです。ぜったいの おすすめ。 》 岡崎武志

 『村田エフェンディ滞土録』角川書店2004年初版を読んだ。エフェンディとは《 おもに学問を修めた人物に 対する一種の敬称 》。舞台は一八九九年のイスタンブール

《 百年前の日本人留学生村田君の土耳古(トルコ)滞在記。 》 帯文

《 人が全てを注視し続けることなど、所詮不可能なのだ。何かは見落とすものだ。 》 54頁

 上記は遺跡発掘現場での感想。私のブログでも誤字脱字を翌日見つけ、冷や汗ばかり。

《 やはり、現場の空気は良いものだ。立ち上がってくる古代の、今は知る由もない憂いや小さな幸福、それに笑い、 戦争や政争などは歴史に残りやすいが、そういう日常の小さな根のようなものから醸し出される感情の残響は、 こうして静かに耳を傾けてやらないと聞き取れない。それが遺跡から、遺物から、立ち上がり、私の心の中に直接 こだまし語りかけられているような充実。私は幸せであった。 》 56頁

 作品に匂いを取り込んだ小説家に吉行淳之介がいるが、この作品でも匂いが大きな比重を占めている。スタンブール (イスタンブールではなく、スタンブールと表記されている)の街中のさまざまな匂い、臭いが描写されている。

《 私たちは馬を降り、首を軽く叩いて褒めてやった。そして宥めながら中庭に通じる通路を引いて行った。馬の 汗や、その体温を通じて温まった革製の馬具の匂いが、通路に満ちた。 》 95頁

《 どうも一神教というのは単純で困る。周りが迷惑する。 》 143頁

 昨日の『ふしぎなキリスト教』を思い、苦笑。

《 ……国とは、一体何だろう、と思う。 》 219頁

 最終頁の一頁前のこの一行が心に深く響く。いい小説だ。一人称の物静かな語り口がじつにいい。 『西の魔女が死んだ』をさらに広げた世界。トーマス・マン魔の山』を連想。多分第一次世界大戦ゆえ。

 ネットのうなずき。

《 私は体は大丈夫なのだが、たとえばスーパーで買い物していて「あ、あれも買っとかなきゃ」と他の売り場へ 移動しようとした瞬間「あれ」が何だったか忘れるとかそういう方面がとても弱い。 》

 ネットの拾いもの。

《 安倍首相が北朝鮮を非難する演説を行った。「無能で傲慢な指導者の為に経済は滞り、国民は混乱している。 国際社会と協調することもなく、身勝手な理屈で近隣国に脅威を与えている!こんなに恥ずかしい国は他にない!」 。 演説を聞いていた国民は、何故彼が自己紹介をしているのか理解できなかった。 》