「百年文庫 26 窓」

 遠藤周作ほか『百年文庫 26 窓』ポプラ社2010年初版を読んだ。ピランデルロ「訪問」が私好み。

《 そのとき彼女は、まだかがんだまま、れいの子供たちのばらばらになった髪や、着くずれた服をなおしてやっている 所だった。咄嗟に身を起して、紹介の労に報いようとしたとき、アンナ・ヴァイル夫人は、自分も、あのモスリンの服の、 広いえぐりを、胸の所でなおすということに考えつこうとはしなかった。だものだから、致しかたなく、私はたぶん私の たしなみ深さが、押しとどめておかなければならなかったであろう以上に、彼女の胸の内側をべっ見してしまうことに なったのである。もちろんそれはほんの一瞬であった。(中略)その眼の持っているれいのいきいきとした光が、今度は 前とは違った輝き方で照り映えた。 》

 胸襟を開くってやつだな。……違うか。

 神西清(じんざい・きよし)「恢復期」もいい。帯に紹介されている結び近くの一文。

《 気がついたとき、私は自分の寝室へ昇る階段の下に佇んで、しっかりと両腕で乳房を抱きしめていた。 》

《  たわむれが不意に陥ちゆく沈黙のいま息づける胸までの距離  永田和宏  》

 ブックオフ長泉店で二冊」。梅原猛『芸術と生命』岩波書店1998年初版、エドマンド・クリスピン『大聖堂は大騒ぎ』 国書刊行会2004年初版帯付、計216円。

 毎日新聞昨夕刊、「特集ワイド 解釈改憲」は作家の半藤一利へのインタビュー「今が『引き返せぬ地点』」。

《 「戦争を体験した世代が生きている限り、時計はそう速く進まない。しかし彼らが死んだ途端、時計は大急ぎで 動き出す。今の阿部晋三政権もそう。政治や官僚の中枢に戦争体験者はもういない。いるのは右肩上がりの栄光しか 知らない世代です」 》

《 一人一人に今できることは何なのか。半藤さんはこちらを見つめ、こう言った。「戦争の芽をつぶしてかかるしか ないですね。自分の目で見つめ、戦争の芽だと思うものを見つけたら、一つ一つ」 》

 同別紙面、「パラダイムシフト ──2100年への思考実験」は、橋爪大三郎「宗教は『連帯』へ進化できるか。

《 人類七十億人のうち、六十億人以上が、西欧キリスト教文明/イスラム文明/ヒンズー文明/中国文明、のどれか に属している。日本のように「宗教なし」なのは、圧倒的少数だ。 》

 なんと独特な日本文明。

 ネットのうなずき。

《 原発事故直後に職員の9割が職場放棄した事が明らかになった。次に同様の過酷事故が起これば、同じ事になるだろう。 今考えるべきは、どうしたら職員が逃げなくなるかではなく、どうしたら原発なしでも大丈夫な世の中にできるかだ。 》
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140520-00000007-asahi-soci

《 個人的には、もし自分が貰えるとしたら欲しいかどうかを基準にした見方をしている。だから名ばかり知られている ような作家の下手な作品なんぞは見たくもない。人生の終わりも見えてきたので、自分勝手な絵の見方でいきたい。 》

 ネットの拾いもの。

《 「世界を変えなかった13人」
   ↑ポール・コリンズ『バンヴァードの阿房宮』(白水社今夏刊)の副題 》