「半蔵の鳥」

 朝、やっとネクタイを締めスーツを着てグラウンドワーク三島の理事長たちと県庁へ赴く。川勝知事に 面談。興味深い反応。その後、交通基盤部農地局へ。幹部職員に三島市沼津市にまたがる松毛川(灰塚 川)の土地整備への協力を要望する。明日の午後視察に来ることに。やれやれ。

 池澤夏樹「日本文学全集」に選出されている中上健次『半蔵の鳥』(『千年の愉楽河出書房新社1982 年収録)を読んだ。付録の吉本隆明「世界論」から。

《 主人公たちはいずれも卑小であるけれど悲劇的な死を遂げるものとして設定されている。あるいは 卑小で無意味であるがゆえに崇高な古代的なあるいはアジア的な悲劇の死として設定されている。
「半蔵の死」の主人公半蔵は、二十五のときにまるで絶頂に肉体が開花したところで「女に手をだして それを怨んだ男から背後から刺され、炎のように血を吹き出しながら走って路地のとば口まで来て、 血のほとんど出てしまった体」で死んでしまう。 》

《 この『千年の愉楽』の世界では、当然のように倫理は存在し得ない。世界は明晰に分離された秩序と 系列の層から成り立っているからだ。 》

 岡本綺堂『半七捕物帳』を連想させる。

《 中上健次の『千年の愉楽』は、誰もが古典近代的な世界からはみだし、逸脱せざるをえないという 現在の必然を、いわば〈逸脱〉から世界の〈再産出〉にまで転化することによって果そうとしている。  》

 二十四日の石川淳『紫苑物語』につながる世界だ。それは福永武彦『深淵』(池澤夏樹「日本文学全集」 に選出)にもつながっている、かも。『深淵』を収録している『ちくま日本文学全集016 福永武彦筑摩書房1991年からエッセイ「岡鹿之助の詩的世界」を読んだ。冒頭。

《 岡鹿之助の芸術について語ることは、芸術そのものを語ることである。 》

 すごい書き出しだ。まあ、日本で一番値段が高いといわれている画家だから。

《 伝統を自分のうちにつくりあげるために岡さんがどれほどパリで勉強されたかは、例えば「油絵の マチエール」という著書を見ればその一端が分る。 》

 歌田真介『油絵を解剖する―修復から見た日本洋画史 』NHKブックス2002年を読めばそんなことは 恥ずかしくて書けなかっただろう。それはさておき。

《 あらゆるすぐれた芸術家は、彼に固有の世界を持つものだと私は考えている。 》

《 物が幻影としてあるのではなく、幻影が物としてある。とすれば、それは日常的な時間を超えた ところに、永遠的なものとして存在することになる。 》

 味戸ケイコさんの鉛筆画や北一明の茶碗、陶彫作品を思う。北一明の作品もまた昨日記した否定形 、逸脱の色が濃い。茶碗は非定型が喜ばれる傾向がある。非定型と否定形とのとてつもない径庭。

 ブックオフ長泉店で二冊。芦辺拓金田一耕助VS明智小五郎』角川文庫2013年2刷、ジョン・スチュアー ト・ミル『自由論』光文社古典新訳文庫2012年初版帯付、計216円。創元推理文庫に『明智小五郎金田一 耕助』がある。重なっている作品もある。

 ネットの見聞。

《 昨年秋の園遊会山本太郎議員が現天皇に「直訴状」を渡したことが問題になったが、それに対する 「回答」が先週、現天皇明治天皇に対する田中正造の直筆の直訴状をわざわざ見に行ったという行動に 現れているとはいえないだろうか。 》 原武史

 さすが、『大正天皇』朝日選書を著した人ではある。

《 「高温ガス炉」開発推進へ 文科省が作業部会設置 」 》
 http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014052301002266.html
《 スゴイな〜。「原子炉」を「高温ガス炉」と名前変えてきた。 》

 新聞記事を読んで「高温ガス炉」の意味が分からなかったが、こんなこととは。

《 ゼロ成長を実現するには、財政、人口、エネルギーといった経済・社会政策だけでなく、それを支える 哲学・思想が必要とされます。金融緩和や財政出動をすれば世の中よくなるという単純思考に比べてよっぽど チャレンジングなんです。 》
 http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/tachiyomi/140303.html#6