「線的と線状」

 前世紀末に話題を呼んだ複雑系の科学は、近代科学の線形の科学から非線形の科学へという題目だった。 中村雄二郎『述語集 II 』岩波新書1997年2刷では以下のように説明されている。

《 私は、近代科学の本質を、本来非線形的な自然や実在を一対一の〈因果関係〉の線的な、〈リニアー〉 な因果関係によって法則的にとらえたところにある、と考えるからだ。本来いかなる自然も実在も、リニア ーな因果関係によって成り立っているものではなく、複雑な相互作用のなかで成り立っていることは明らか である。 》

 ティム・インゴルド『ラインズ 線の文化史』では線状の重要性が明らかにされる。近代・現代科学で いう線的とは、リニアー LINEAR (直線的)が基本で、『ラインズ( LINES) 』ではリニアーとは点と点 を直線で連結することだと主張される。そしてそれとは反対の直線的ではない糸 THREAD が基本視される。 連結の直線的に対する、糸のよれてゆく線状。複雑系の科学との近接を感じる。線的と線状。こんな拙い 説明ではその本質的な違いを半可通に誤解される気がする。
 余談になるが、『ラインズ 線の文化史』を読んでいて、洲之内徹『気まぐれ美術館』のあちこちへの 寄り道、吉田健一『ヨオロツパの世紀末』の文章のよれ具合を思い浮かべた。

 昼過ぎ局地的な雷雨。一時間ほど昼寝。上がったのでブックオフ長泉店へ。芦辺拓メトロポリスに 死の罠を』双葉文庫2004年初版、宮本常一『忘れられた日本人』岩波文庫1986年5刷、計216円。後者は 1960年に未来社から出た元本を持っているけど、文庫の注と網野義彦の解説目当て。

 ネットのうなずき。

《 ちゃんとわかる人にとっては、わけのわからない人たちにわからせようとするよりも、彼らに負けて おくほうが骨が折れない。 》

 ネットの見聞。

《 ミステリ評論家千街晶之への質問。
  無人島へ10年の流刑。持って行ける本は三冊だけ。千街さんでしたら何を?

  まず自分にとってバイブル的な本として、松岡正剛氏の『フラジャイル 弱さからの出発』(ちくま 学芸文庫で入手可能ですが、装幀はもとの筑摩書房の単行本のほうが好きなのでそちらにします)。小説 を一冊選ぶならセオドア・ローザックの大傑作『フリッカー、あるいは映画の魔』(文春文庫だと上下巻 で二冊になってしまうのでもとの文藝春秋の単行本になりますね)。流刑の身で読み返すと主人公にしみ じみとシンクロしそうな気がします。  三冊目ですが……恥ずかしながら、自分で書いた本も一冊くらい 持っていきたいです(笑)。建石修志氏の装幀が素晴らしい『幻視者のリアル 幻想ミステリの世界観』 (東京創元社)にしておきましょうか。 》
 http://blog.livedoor.jp/c_nagatsu/archives/52207151.html

 松岡正剛氏『フラジャイル 弱さからの出発』はじつに刺激的だった。単行本、文庫本ともに持っている けど、単行本のほうが読んだ気になる。付箋が林立。

《 総務省は30日、4月の家計調査報告を発表した。2人以上の勤労者世帯の実収入は、1世帯当たり46万3964 円で、前年の同じ月と比べ、マイナス7.1%。昨年10月以来、7か月連続の実質減少となった。 》
 http://thepage.jp/detail/20140530-00000005-wordleaf

 内閣人事局の看板、下手くそな字だなあ。
《 「稲田朋美大臣(写真の女性)の、瑞々しい筆遣い。」という安倍総理の評でした…。 》
 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201405/30jinjikyoku.html