「 寡黙なる巨人 」

 多田富雄『寡黙なる巨人』集英社文庫2010年初版を読んだ。脳梗塞で半身不随に なった著者の壮絶な闘病記。

《 これは絶望の淵から這い上がった私の約一年間の記録である。 》  「はじめに」

《 右半身の自由を失い、字が書けなくなった。喉の麻痺のため、発音も発声も できない。 》 113頁

《 そればかりではなかった。喉の麻痺は、たとえ流動物であろうと食物を 飲み込むことを不可能にした。どんなに飢えていても、喉が火のように渇いても、 一椀の粥、一滴の水も飲めない、まるで餓鬼のような生活が待っていた。 》  114頁

《 妻が、一人でうなずいている私に、そっと彼女のショールを掛けてくれた。 そうだ。もう一人同行してくれるものがいるではないか。さあ生きようと私は思った。  》 110頁

《 多田さんの描写を超えた臨死体験の記述は、当分現れないだろう。 》  養老孟司「解説」

 後半は指一本でパソコンに綴った随筆。

《 いくら部分が完備しても、全体を見る目がなければ大事故は防げまい。 》  154頁

《 本当に国を愛する心は、自国の文化を享受し、生まれた町や村を懐かしみ、 国の歴史を客観的に見ることから、自然発生的に生まれる。 》 164頁

《 教養とは、今それが役に立たなくても、いつかそれが役に立つように蓄積する ものなのだ。 》 201頁

 昼前、大型店で半袖のワイシャツを二着購入。服装にこだわりはまるでないので バーゲン品から選ぶ。食料品売り場へ。好みのコーヒーがない。買わずに出る。
 午後、コミュニティFMボイス・キュー(エフエムみしま・かんなみ)で ゲスト出演の録音。

 ブックオフ長泉店で四冊。寮美千子『雪姫 遠野おしらさま迷宮』兼六館出版 2010年初版帯付、中島義道『哲学の教科書』講談社学術文庫2008年20刷、芳賀徹明治維新と日本人』講談社学術文庫1993年13刷、吉本隆明『詩の力』新潮文庫 2009年初版、一冊80円、計320円。

 ネットの見聞。

《 ルールを決めるときには、「そういうもんだ」ではなく、誰が何のために そのルールを必要としているかをちゃんと説明した方がいい。そうすれば、 意外と理由のない決まりが多いことがわかる。 》

《 自衛隊基地の誘致か原発の誘致か、という二者択一なら、かつては圧倒的に後者だった。 「平和」と「文明」のシンボルだった。基地にしときゃ良かった。 》