「 百人百句 」

 大岡信『百人百句』講談社2001年4刷をあちこち読んだ。

《  炎天や死ねば離るゝ影法師   西島麦南  》

 まず、この句が目に飛び込んできた。大岡信は書く。

《 人間に対してのあきらめ、諦念があったうえでの句である。 》

 他に紹介されている句もいい。

   雪だるまとけゆく魂(たま)のなかりけり

   冬の蝶(てふ)睦む影なくしづみけり

《  おそるべき君等の乳房夏来(きた)る   西東三鬼  》

《 日本敗戦の翌年、昭和二十一年(一九四六)に作られた句である。 》

《 新しい時代の新鮮な息吹を、夏の到来とともに開放的になっていく女性の 姿の中にとらえている。 》

 正統的な妥当な解説だ。これはサザン・オールスターズの歌『匂艶(にじいろ) The Night Club 』1982年に直結する。

《 ♪ 薄手のブラが裸の中身も透かす ♪ 》

 短歌だと河野裕子だ。

《  ブラウスの中まで明るき初夏の日にけぶれるごときわが乳房あり  》

 もうひとつ。角宮悦子。

《  抱へたる薊に刺されて乳房あり告白するときめてはをらぬ  》

 男の返し。福島泰樹

《  汝の目と乳房を愛す晩秋の月光(つきかげ)くまなく射すガラス窓  》

《  ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜(よ)   桂信子  》

《 女性の官能の瑞々しい揺らぎを敏感にとらえており、さわやかさと色っぽさ が共存している。 》

 こんな女性に巡り逢いたい(どっかから石が飛んできそう)。紹介句から。

   窓の雪女体にて湯をあふれしむ

   やはらかき身を月光の中に容れ

   衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲く

《 女性の体を対象にして、外側から見た美しさや充足感、魅力といったものを、 信子ほど感じさせる俳人はいなかった。 》

 窓の雪女、と弁慶読みをしたくなる。

《  秋の江(え)に打ち込む杭(くひ)の響かな   夏目漱石  》

《 漱石は、道もまだ開発されていない鄙びた伊豆修善寺の旅館で寝ていた。  》

《 海からは遠く、入り江で杭を打ったところで聞こえるはずもない。だから この句は実景ではあり得ない。そういうことを知らないと理解が中途半端に なる。この杭の音は幻聴なのである。 》

 若き日、「杭」に「悔い」の意味を重ねて俳句を作った。内容は忘れた。 喰い改めよう。

《  人それぞれ書を読んでゐる良夜かな   山口青邨  》

 夕暮れにブックオフ長泉店へ自転車で行く。色川武大『離婚』文藝春秋1978年 初版帯付、『人生の知恵 IV ゲーテの言葉』彌生書房1997年初版帯付,鷲田清一 『新編 普通をだれも教えてくれない』ちくま学芸文庫2010年初版帯付、 チャペック『ロボット』岩波文庫1993年7刷、計432円。黄昏に帰る。

 ネットの見聞。

《 つまり佐藤雄平福島県知事のご出身地の会津地方については、放射性ヨウ素が 降り注いだという事実を指摘するのはタブーだということでよろしいでしょうか。 》
 http://www.sting-wl.com/iodine-map1.html

《 「原発は決して事故を起こしたりしません」と言ってた奴が、「戦争します」 なんて堂々と言うわけあるかいな。何度だまされりゃ気が済むんだよって話。 》  AkiraTheHustler

《 石破君、日本が戦後70年平和に繁栄できたのは、9条、平和憲法日米安保が あったのは事実。だが、それは、笑われるよ。70年平和だったのは、日本の平和を 守り、世界の平和実現に必要な日本人の哲学、価値観だ。そして、その誇りを胸に、 世界中を駆けまわってきた企業人だ。政治、軍ではない。 》 Moira

《 「遺伝子が示すのは確率でしかなく、宿命ではない。DNAの科学的、経済的、 政治的、社会的側面の検証」 》
 カトリーヌ・ブルガン/ピエール・ダルリュ『遺伝子の帝国――DNAが人の未来を 左右する日』
 http://www.chuko.co.jp/tanko/2014/06/004616.html

 ネットの拾いもの。

《 某県議の会見、やっと権力と税金を思うがままに使える立場につけたのに、 すべてパァやぁっっっっという思いだけは、ひしひしと伝わってくる。 》

《 城崎の日帰り出張が大雨で不可能な日があったことが発覚し、絶対絶命の 窮地と報じられて、お先真っ暗。
  「城の崎にて」から「暗夜行路」だわな。ヨッ! 》