「 日本の詩歌 」

 台風八号、来そうなので昨夜からソワソワしていたのだけれど、未明に 目が覚めても雨も風もなし。昨夜の雨雲予想、ここだけ雲がない。当った。 台風一過の夏空。部屋は西向きなので冷房。設定29度。涼しい。

 大岡信『日本の詩歌  その骨組みと素肌』岩波現代文庫2005年初版を 読んだ。九四、九五年パリで行った五回の講義の原文。第一回(第一章) 「菅原道真 詩人にして政治家」から目を瞠る。

《 古代日本の詩歌について論じる場合、最も重要な、しかし忘れられて いる人物 》

《 ここで注目すべきことは、ここで詠まれている人々のほとんどすべてが、 重税にあえぐ貧しい人々として描かれていることです。 》

《 このような政治的背景をもつ為政者の不正・腐敗弾劾の詩は、道真の 全作品の中でも数は多くはないのですが、私はこのような詩が日本の詩の 歴史の中にあったことを重要だと考えています。 》

《 これに対し、近代以前の日本の詩史には、菅原道真の詩を除いては、 このような主題を扱った詩は、まったく書かれませんでした。 》

《 大きな深淵が漢詩と和歌との間には横たわっていたのでした。菅原道真 は、その意味では、この深淵そのものだったのです。 》

 二章「紀貫之と『勅撰和歌集』の本質」にも蒙を啓かれる記述。

《 十世紀初頭の日本に生じた一大転換、すなわち中国(唐)崇拝から自国 尊重への、漢詩文から和歌と仮名文字文学への、最高位の貴族が指導する 文化から中級の貴族が指導する文化への、つまり菅原道真から紀貫之への、 転換を象徴するものでした。 》

《 紀貫之ほか三名の、地位としてはまことにとるに足らない四人の下級 貴族が、和歌の上手という理由によって『古今和歌集』の編纂を天皇から 命じられたのです。 》

《  秋来ぬと目にはさやかに見えねども
    風のおとにぞおどろかれぬる       敏行  》

《 ここで重要なことが明らかになります。「視覚」よりもさらに微妙で とらえがたいのが普通であるはずの「聴覚」が、和歌では視覚よりも一層 深い味わいをもった感覚として喜び迎えられているということです。 》

 三章「奈良・平安時代の一流女性歌人たち」、四章「叙景の歌」五章 「日本の中世歌謡」と続くが、どの章にも驚くべき知見が随所に見られ、 これは名著といえるかも。

《 目に見える形の美醜は、客観的判定もある程度可能な領域に属して います。しかし、美の深さや高さ、あるいはどれほど人に滲透したかと いうことについては、客観的判定の尺度など存在していません。それを 測定するためには、人それぞれ、自分自身の心の深さや高さによって 測る以外にありません。都合のいい出来合いの美醜判定の物差しは存在 しないのです。 》 四章「叙景の歌」

 心強い発言だ。

 ネットの見聞。

《 日本が本当に世界から尊敬されるかどうかは、たとえばイスラエルパレスチナ問題の解決のためにどのように立ち回れるかということに かかっている。先進国の中で数少ない非キリスト教国としてできることが 中東ではたくさんあるはず。これに乗じて武器を売ることではないだろう。  》 毛利嘉孝

《 2010年に石破幹事長は自身のブログや衆議院等で「徴兵制は苦役では ないから憲法違反ではない」と発言していたとのことです。 》
 http://saigaijyouhou.com/blog-entry-3103.html

《 日本製のブルドーザーが戦場で活躍したと言うことと、日本製の ロケット弾が家族団欒を吹き飛ばしたと言うのではまるで意味が違う。 武器は効率的に人を殺す事を目的として設計、製造されるもの。この世に 存在してはいけないものだ。そんなもので経済が回って嬉しい? 》  ラバ@反不公平

《 ところで、「原発事件」はいつ収束するんだ? 》